2008.09.02
Bell De Jour 邦題:昼顔
幼少の頃の記憶がトラウマとなり、誰もが羨む夫との結婚生活に戸惑いを感じ、昼間は高級娼婦としての2重生活の中で、本当の愛を知ることになる女性の物語。第28回ヴェネチア国際映画祭、金獅子賞受賞作品。
セブリーヌ(カトリーヌ・ドヌーブ)とピエール(ジャン・ソレル)は、誰もが羨むリッチで美男美女の夫婦。ただ彼女は、幼少の頃に粗野な配管工に抱きすくめられるという異常な体験がトラウマとなり、素直に夫と愛し合えないでいました。
映画は、そんな彼女が抱き始めた妄想のシーンから始まります。情欲の鬼と化したピエールによって縛りあげられ、下男たちによって鞭打たれた上、辱められます。肉体関係のない実生活と、そういった異常な妄想の世界の間で揺れていた彼女は、ふとしたことでオペラ座の裏通りにあるという娼婦の館のドアを開けることになります。
夢というか妄想と現実が入れ替わり立ち代り現れるため、よく見てないと何が何だかよくわからなくなります。2,3回見れば大丈夫ですが。
「昼顔」というのは、セブリーヌのいわゆる源氏名。そしてこの映画が普通の映画とちょっと違うところは、いわゆる音楽と呼ばれるものが全く使われていないことです。それは、彼女の妄想、あるいは真実の愛を覆い隠す霧のようなモチーフである馬車の鳴らす鈴の音を、あたかも私たち自身の夢に入り込ませるような効果を出しています。ですから、この映画のサントラは存在しません。
カトリーヌ・ドヌーブは当時24歳。若々しさというよりは、すでに大人の美しさをたたえています。本当に美しいです。「世界最高の美女」と謳われる所以です。完璧です。ボディライン自体は、私の好みとはちょっと違ってますが・・・^_^;
ただ美しいだけでなく、演技も素晴らしい。24歳にして、大人の女性の苦悩や苛立ち、ささやかな喜びをしっかり表現しています。エンディング近くのテーブルの端を指でなぞる演技なんか、最近の若い俳優の演技では見たことがない。二本の指が、切なく語ります。
カトリーヌ・ドヌーブのヌードが見られるとか、プロットとしてはエマニエル夫人とかO嬢の物語に近いものがありますので、その手の入門映画としても楽しむことは出来ますが、「フランス映画界の女王」の演技派の作品としてしっかり見るほうが面白いと思います。
基本の骨子は、ちょっとややこしいし、フランス映画の標準的に誇大表現してないのでわかりにくいのですが、一瞬だけ写るエンディングのピエールの涙がすべてです。
フランス映画好きに。文芸作品となっていますが、映画がそれほど好きでない人で、ちょっとエッチな映画が見たい方にも・・・?
出演:カトリーヌ・ドヌーヴ,ジャン・ソレル,ミシェル・ピッコリ,ジュヌヴィエーヴ・パージュ,ピエール・クレマンテ
監督:ルイス・ブニュエル 1967年
BOSS的には・・・★★★★☆