2008.09.07
LAWRENCE OF ARABIA 邦題:アラビアのロレンス
第一次大戦下のシリア・アラビア砂漠を舞台に繰り広げられた、アラブ民族のオスマントルコからの独立闘争(アラブ反乱)を、実在のイギリス陸軍将校の自伝著書を元に描かれた歴史映画。映画ファンの方なら、まずご存知ですよね。
1935年5月13日、一台のバイクが事故を起こし、乗っていた男性が死亡します。男の名はトマス・エドワード・ロレンス。教会での盛大な葬儀、賛否両論の多くの参列者。はたして、ロレンスとはどんな人物だったのか?物語は20年ほど前に遡ります。
第一次世界大戦が勃発して2年余りの1916年、連合国に属するイギリス軍のカイロ駐在の情報部少尉のロレンス(ピーター・オトゥール)は変わり者で知られていました。博識で知られることから、当時イギリスと敵対する同盟国側のオスマントルコからの独立闘争を指揮するファイサル王子(アレック・ギネス)に会うため、単身アラビアの砂漠に赴きます。
途中、アリ(オマー・シャリフ)との運命的な出会いやファイサル王子とのやり取りから、彼らの戦いに協力する意を固め、アリの部下50名を従えて、死と背中合わせの砂漠の行軍を伴うトルコ軍の要塞アカバ攻略に出発します。
「アラブ人にアラブの国を!」というささやかな情熱は、やがて大英帝国の思惑や、悲惨な戦闘、国としての大義名分と個人の因縁、民族間の問題などに次々と襲われます。
砂漠に生まれ、砂漠で育ち、砂漠で消え入りそうになる彼のロマンティックな志。それを見守る、時に厳しくときに優しい大自然。何もかもが素晴らしいの一言に尽きます。
ピーター・オトゥール、アンソニー・クイン、オマー・シャリフらの熱演。やはりロマンは男の世界からしか生まれない!?(女性の皆さん、失礼いたしました・・・)
それも、人が生きるには極限の如く厳しい砂漠、それと引き換えにこの世のものとは思えない美しい砂漠。そこで繰り広げられる、ばか者たちの物語は、有史以来ずっとロマンティシズムに溢れています。
エンディング近くで、帰国が決まってロールス・ロイスで失意のうちに帰路に着いたロレンスの横を、1台のバイクが抜き去ってゆきます。それは、冒頭に出てきた彼自身であり、夢とロマンに溢れていた「アラビアのロレンス」との決別なのかもしれません。実在のロレンスも、バイク事故でこの世を去ります。
長い映画です。3時間を越えます。でもあっという間です。物語の展開もさることながら、時折織り込まれた美しい自然の風景。今頃の映画だと、時間の関係でカットされそうな、言ってしまえば無駄なシーンが、この映画を名作足らしめる一因となっていることは間違いありません。
モーリス・ジャールの音楽も素晴らしいのです。第35回アカデミー賞(作品賞・監督賞・撮影賞・美術監督・装置賞・作曲賞・編集賞・録音賞)、第20回ゴールデングローブ賞(作品賞・監督賞・助演男優賞・撮影賞)受賞。
普通なら30秒もない夕日のシーンが、3分とかあって、決してダイジェストではない、観客すべてをかの厳しくも美しい砂漠のど真ん中に招待してくれます。そう、ロレンスのとなりで、らくだの背に揺られて。
出演:ピーター・オトゥール,アレック・ギネス,アンソニー・クイン,オマー・シャリフ,ジャック・ホーキンス,アーサー・ケネディ,アンソニー・クェイル,ホセ・フェラー,クロード・レインズ
監督:デーヴィッド・リーン 1963年
BOSS的には・・・★★★★★