2008.09.10
Taxi Driver 邦題:タクシー・ドライバー
またまた古い映画です。私たちの世代には良かれ悪しかれ大きなトピックスだったベトナム戦争。「グッド・モーニング・ベトナム」でも描かれていたサイゴン陥落の頃のニューヨークを舞台にしたドラマ。反戦映画でもアクション映画でもない、ヒューマンドラマ?当時は「アメリカン・ニューシネマ」の代表作と言われていましたが・・・。
学歴もなく、海兵隊員としてベトナム戦争に従軍し、その後遺症なのか不眠症に悩む26歳の青年トラヴィス(ロバート・デ・ニーロ)。眠れない夜に稼ぎをと、小さなタクシー会社を訪れた彼は、イエロー・キャブの夜勤ドライバーになります。
社交性に欠け、同僚たちからは守銭奴と呼ばれます。親元を離れての一人暮らし、友達もなく、恋人は映画館のスクリーンに登場するポルノ女優。大都会の中で、本物の孤独な毎日を過ごすトラヴィス。そして彼の職場、いや暮らしそのものである夜のニューヨークの界隈は、悪と腐敗ばかりが溢れていました。かの戦場に負けず劣らず。
ある日、次期大統領候補の選挙事務所に務めるベッツィー(シビル・シェパード)を見初め、デートに誘います。しかし、日頃の習慣からか、誘った映画がポルノ映画。彼女は憤慨してその場を去ります。笑えます。
電話にも応じず、送った花も送り返され、乗り込んだ選挙事務所をつまみ出され・・・。電話のシーンがまたいいのですが・・・。で、彼の精神は、そのことを境に一気に荒んでゆきます。そして、闇ルートで44マグナムを初めとする4丁の拳銃を購入した彼は・・・。
善と悪という2元論の間で激しく揺れる彼の実直な魂は、時に赤裸々に己を語り、時に虚栄に溢れます。幼くして娼婦として働くアイリス(ジョディ・フォスター)をさとしたと思ったら、拳銃を構えながら鏡に向かって、「俺に用か?俺に向かって話しているんだろう?どうなんだ?」と一人芝居。このシーンも圧巻です。なんでもデ・ニーロのアドリブなんだそうですが・・・。
アカデミー賞助演女優賞にノミネートされた弱冠13歳のジョディ・フォスターの演技もさることながら、シビル・シェパードがなかなか色っぽい。彼女、JAZZボーカリストでアルバムも出してるんですよね、寺島さん!
監督は「ディパーテッド」のマーティン・スコセッシ。でもって本人も黒人に女房を寝取られ、ぶっ殺すといきがるオヤジの役で怪演(笑)。それにしても、さすがさすがの素晴らしい映像映画です。マイケル・マンも習ったのではのきらめく夜の街や、あっと驚くカメラアングルなどなど。
トム・スコットのテーマ曲もかっこいいし、ジャクソン・ブラウンまでかかるのにはびっくり。さすがはスコセッシですなぁ〜。
脚本も素晴らしいし、まあなんと言ってもデ・ニーロの迫真の演技でしょうなぁ〜。ファッションとか空気は、いまや失笑の70年代そのままではありますが、登場人物の心理描写やドラマ性は昨今の名ばかりアクション映画とは比較にならないリアリティです。
この映画に影響されたジョディ・フォスターおたくの大学生ジョン・ヒンクリーが、1981年にレーガン大統領暗殺未遂事件を起こし、衝撃を受けた彼女は一時期映画界から遠ざかったと言うのも有名なお話。
最近日本でも、似たような事件があたり前のように起こるようになりましたが、この映画の根底に流れるものは、負け組みへの鎮魂歌でも、権力に対する闘争奨励でもなく、結局一人の人間として男として、世に何を残すかを問いかけていると思うのですが・・・。
出演:ロバート・デ・ニーロ,シビル・シェパード,ジョディ・フォスター,ハーヴェイ・カイテル,ピーター・ボイル
監督:マーティン・スコシージ 1976年
BOSS的には・・・★★★★★
おすすめ平均:
至上最も皮肉なヒーロー
鏡に向かって話し掛けているのは・・・
一人の男*
70年代 ニューヨーク ストリート
映画も名作ですが、音楽もほんとうに素晴らしい。
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