2008.11.03
DOCTOR ZHIVAGO 邦題:ドクトル・ジバゴ
第一次世界大戦、そしてロシア革命の嵐の時代を生きた詩人で医者の主人公ジバゴ(オマー・シャリフ)と彼が命をかけて愛した薄幸の女性ラーラ(ジュリー・クリスティ)、そして時代に翻弄された二人の愛と生涯を描いた大作です。
この映画をご覧になる前に、「ロシア革命」「ボリシェヴィキ」「ロマノフ王朝」とかついて知識を得ておくことをお勧めします。この映画一本で、ロシアがソ連に変わる歴史のお勉強も出来ます(笑)。
皆さんも世界史の時間にお勉強した「サラエボ事件」を発端に始まった、ロシアを含むヨーロッパの多くの国々を巻き込んだ、歴史上初めての第一次世界大戦。当時のロシア帝国もこれに参戦しますが、近代的な兵器・軍隊を擁するドイツ帝国に破れ、国内は疲弊し、当時の首都ペトログラード(現在のサンクトペテルブルグ)での市民デモが反乱兵を巻き込み、1917年「2月革命」へと発展します。10月には極左集団ボリシェヴィキを率いるレーニンが赤軍を組織、失脚した皇帝ニコライ2世を擁護する白軍との内戦状態になります。
このあたりの背景を事前に理解しておくと、この映画は非常にシンプルな人間愛のドラマになります。前半はそのあたりの時代背景と主人公の生い立ちを説明する為に、ややダルな時間が過ぎますが、やがて二人が革命の嵐に巻き込まれ始めると、没落するブルジョアジーの悲劇と、その狭間に生まれ育まれ、しかし激しく渦巻く時代の嵐に吹き消されそうな彼らの愛が、息もつかせずどんどんと展開してゆきます。
映画中盤、ニコライ2世殺害の話も出てきて、300年続いたロマノフ王朝も終焉を迎えます。つい最近まで、彼の末娘アナスタシアが生きているのではというような話題がありましたよね!
監督は「アラビアのロレンス」のデイヴィッド・リーン。そして、パラライカが美しくまた印象的な「ララのテーマ」はモーリス・ジャール。バラライカは、お話のキーアイテムでもあります。ジバゴの兄エフグラフをアレック・ギネスが淡々と演じています。
イギリス・アメリカの合作映画。「ロシアの物語なのに、英語?」なんて野暮なことは言わないこと。
「愛」は何時の時代にも、ふとしたことで生まれ、人は時に自らの命を賭してでもそれを守り、また時代の流れの中で、それははかなく消えて行く。映画の一シーンにもあったように、身も心も閉ざしてしまう厳しい寒さの中に、氷の結晶のように美しい愛はその姿を現し、暖かい日の光を受けた時、それははかなく消えてゆく。
しかし人が次の時代に命も記憶も引き継ぐ時、この「愛を生む力」もやはり引き継がれ、やがて新しい時代に新しい愛が花開く。
大切なことは、今を生きる私たちが常に「真実の愛」を求め続けることではないでしょうか?それは決して答えの出ない問いかけなのだけれど。なぜならそれこそが、誰かの人生そのものであるのだから。
第38回アカデミー賞、脚色賞・色彩撮影賞・色彩美術賞・色彩衣裳デザイン・オリジナル作曲賞受賞。
出演:オマー・シャリフ,ジュリー・クリスティ,ジェラルディン・チャップリン,ロッド・スタイガー,アレック・ギネス
監督:デイヴィッド・リーン 1965年
製作:カルロ・ポンティ
音楽:モーリス・ジャール
BOSS的には・・・★★★★☆
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