2008.11.12
THE GRADUATE 邦題:卒業
私たちの世代には、サイモン&ガーファンクルの「サウンド・オブ・サイレンス」とともに通り過ぎていった青春映画。恋愛映画ではありません。テーマは「卒業」なのです。いわゆる「アメリカン・ニューシネマ」の代表作のひとつ。
私自身20歳の頃、5つ年上の女性とお付き合いをしていました。今更ながら、子供の私とよくお付き合いをしてくれたなと思うのですが、当時大人の振りしてお酒を飲んだりタバコを吸ったりしていても、やはり精神的には未熟なコドモ、でした。まるでこの映画のベンジャミン(ダスティン・ホフマン)と同じように。
「卒業」とは思うに、「子供」と「大人」の架け橋ではなく、「迷いの時代」から「青春」への別れ路なのではないでしょうか?って、アタクシずーっと死ぬまで「青春」していたい病なものですから・・・。
この映画はとにかくラストシーンが有名で、あれだけ観ると感動の恋愛映画と勘違いしてしまうのですが、エレーン(キャサリン・ロス)の母である年配のミセス・ロビンソン(アン・バンクロフト)との秘められた情事を通して、大人の彼女とまだ子供の彼の対比がコミカルに描かれています。
ベンにとっては、学卒とともにやってきた世界だと思っていた夜ごとの逢瀬。しかし彼の中にうごめく虚無感。これこそが「真の卒業」前の胎動だったのです。私自身が、彼と同類であることを痛感します。
「サウンド・オブ・サイレンス」「ミセス・ロビンソン」、特にアコースティック・ギターの調べの美しい「スカボロー・フェア」や「4月になれば彼女は」は、当時コピーして歌ったものです
私の好きなシーンは、大学を辞めたエレーンを探して、「ミセス・ロビンソン」をBGMにアルファロメオを駆るシーン。この時間こそが、彼の「卒業」のプロセスなのです。彼の迷い、偽り、すべての間違いがバックミラーに消えてゆきます。
そしてあまりにも有名なエンディング。そこにいるロビンソン夫人は、彼にとってかつての輝きは微塵もない、枯れ果てた老人のハートになった「ただの大人」でしかない。それは彼の世界から見た彼女であり、また観ている私たちに突きつける「卒業」の意味でもあります。
結局のところ、ベンが卒業したのは「迷い」の世界であり、彼を待っているのは永遠に続く「青春」だったのです。アカデミー監督賞受賞。
出演:ダスティン・ホフマン,アン・バンクロフト,キャサリン・ロス
監督:マイク・ニコルズ 1968年
音楽:ポール・サイモン,デイヴ・グルーシン
BOSS的には・・・★★★★☆
もっとムービー・アーカイブスはこちら >>> 「ムービー・インデックス」