2008.12.22
邦題:フローズン・タイム
お堅いBOSSもたまには、ちょっとエロい映画も見ようじゃないか!と、ジャケ買いではなくジャケ借りした作品。意に反して中身は、ある青年の夢と現実の織りなすファンタジー・ラブストーリーでした。
美大の学生ベン(ショーン・ビガースタッフ)は、幼い頃からちょっとエッチなことが好きな、普通の男の子。しかし彼はそんな女性の持つエロスを、自ら絵を描くという生き方に昇華してゆきます。
ただ、授業では彼の心を動かすような美しさには出会えない。そんな彼は、ちょっとした行き違いでガールフレンドのスージー(ミシェル・ライアン)に罵声を浴びせられつつ破局。しかし、彼女のことが忘れられず、とうとう不眠症になってしまいます。
眠れない8時間を有意義に過ごそうと、夜中のスーパーで働くようになった彼は、時間を止めるという能力を身につけます。初めはちょっとした悪戯しかしていなかった彼は、ある日から勤務中に時間を止め、客の若い女性たちの洋服を脱がせては、彼女たちをスケッチブックに書き写してゆきます。というシーンが、ジャケットになっていたわけですが・・・。
で、同じスーパーで働くシャロン(エミリア・フォックス)とある日、それぞれの夢を語りあうことで彼はとうとうスージーの呪縛、「眠れない夜」から解き放たれます。
かつてフロイトという心理学者が、「性欲論」なるものを著し、人には生まれながらにして性欲なるものが存在し、人の生き死にに大きな影響を与えると説きました。愛と性欲の狭間で揺れ動いていた頃読んだこの本、結局そんな本能的な欲望をどういう形で昇華するかによって、人は無比の芸術家にも前代未聞の犯罪者にもなります。特に男性の場合・・・。
で、この映画をいわゆる「エッチな映画」の延長で見ると、完全に消化不良な作品でしかありません。彼にとって「エロス」とは、彼の追い求める「美」の生々しい体験であり、時間を止めながら、逆に人の生きる、とどまることのない時に流れの中から、「美しさ」そのものを鉛筆で切り取ってゆきます。
とはいっても、まあこんな主題が世紀の大作になるはずもなく、またコメディや青春ドラマ、「ボーイ・ミーツ・ガール」にファンタジーといった、さまざまな要素をぶち込んだ為に、全体的には希薄であり、逆にそのことがこの犯罪的視点を軽やかに見せてくれます。
冒頭に流れる音楽は、ベルリーニの歌劇「ノルマ」から、「清らかな女神」。そのままの流れで、自分たちにとって真の「清らかな女神」を探す旅を続けるならば、結構いい映画なのかもしれません。女性の方には理解しにくい内容かもしれませんねぇ。作りこみ次第では、もう一息で★4つだったかも!イギリス映画です。
出演:ショーン・ビガースタッフ,エミリア・フォックス,ショーン・エヴァンス,ミシェル・ライアン,スチュアート・グッドウィン
監督:ショーン・エリス 2006年
BOSS的には・・・★★★☆☆
もっとムービー・アーカイブスはこちら >>> 「ムービー・インデックス」