2008.12.29
汚れた英雄
暴力とSEXを除くと、もはや何も残らないと評された作家大藪春彦の同名小説を、当時飛ぶ鳥を落とす勢いだった角川春樹が映画化した、80年代の2輪レースファンのバイブル映画です。天性のルックスを武器に上流社会の女性たちに貢せ、その資金でレースに生命を賭ける若きライダーの物語。
北野晶夫(草刈正雄)は、バイクメーカーのファクトリーであるワークスではなく、個人参戦のプライベーターとしての誇りを持ち、「プライベーターとして、世界のサーキットの最速レコードをすべて塗り替えること」を夢見ていました。しかし、国内でもトップクラスのレース活動を続けるには巨額の資金が必要です。
そのため彼は、世界的なデザイナー斎藤京子(木の実ナナ)や、コングロマリットの女性オーナーであるクリスティーン・アダムス(レベッカ・ホールデン)、財閥令嬢の御木本菜穂子(朝加真由美)らに男女関係をベースにパトロンとなってもらい、自らはストイックに2輪の頂点を目指します。
ライバルはワークスライダーの大木圭史に勝野洋、彼を支えるチームには奥田瑛二と浅野温子の緒方夫妻にメカニック雨宮貴司に林ゆたか。実際のライディングシーンは、当時の全日本のトップライダーである平忠彦や木下恵司らが参加していて、レースシーンは全日本のチャンピオンレースそのものです。
原作は1969年で、サーキットも1957年にオープンした日本のロードレース発祥の地「浅間サーキット」。また北野晶夫は、交際相手の女性を殺害するという犯罪まで犯しますが、映画版はぐっとソフィストケートされ、レースの華やかさと男の戦いを見事に描いています。
事業戦略会議の席上、クリスティーンが北野晶夫と比べてくたびれていい訳ばかりする重役連中に対し、「あなた方に足りないのは、イニシアチブです!」と一喝するシーンは個人的にはなかなかだと思いました。
リッチな女性に貢がせ、自らはレースという究極の夢を実現しようとする、なんともはや羨ましいばかりの物語であり、まあ「男の子供っぽいエゴ」だと言われてしまえばそれまでなのですが、本気で「夢をかなえる」ためには、ストイックな求道精神が必要であることを、しっかりと伝えてくれます。
男と女、夢と現実、それらが織りなすとある一枚のドラマです。すべての2輪ライダーに贈ります。
出演:草刈正雄,レベッカ・ホールデン,木の実ナナ,浅野温子,勝野洋,貞永敏,林ゆたか,奥田瑛二,朝加真由美
監督:角川春樹 1982年
BOSS的には・・・★★★☆☆
おすすめ平均:
若いロードレースファンの方も見てください。
選曲の素晴らしさ。
突っ込みたいトコはいっぱいあるけど・・・
汚れた英雄
ある意味駄作!ある意味最高!
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