2008.12.03
SPLENDOR IN THE GRASS 邦題:草原の輝き
草の輝くとき
花美しく咲くとき
ふたたび
それは還らずとも
嘆くなかれ
その奥に秘められし
力を見出すべし
ワーズワースの「草原の輝き」の一節です。この詩がモチーフになった、巨匠エリア・カザンの描いた青春ドラマ。
1920年代の中西部。高校生のバッド(ウォーレン・ベイティ)とディーン(ナタリー・ウッド)の二人は恋人。普通の中流家庭の娘であるディーンは、セックスに嫌悪感を持つ母親の影響を受け、バッドのすべてを受け入れることが出来ません。
一方のバッドは、父親が石油関連の企業を経営する裕福な家庭の一人息子。自慢の息子をエール大学に入れたい父親の思いは、彼にとっては大きな負担となっていました。
若い二人によくある行き違い。といっても、今時は携帯メールでベッドインの時代なのかもしれませんが、少なくともフリーセックスが声高に叫ばれた60年代後半以前は、これがあたり前でもありました。
そしてついに、バッドは別のクラスメートの誘惑に負けてしまいます。そのことを知ったディーンは河に身を投じ、バッドによって命は救われたものの、壊れた魂を癒すため精神病院に行く事になります。
世界恐慌の時代を経、二人は再会することになるのですが・・・。
先にもお話しましたが、ファーストフードのようにセックスが手に入る現代では、こんなことで悩み苦しみ、人生までも大きく変えてしまうような純愛など、鼻にもかからないお話かもしれませんが、人が個人として、自分以外の人間と関わることの大変さ、コミュニケーションなどと言う言葉で片付けてしまいがちな「心を伝えることの大切さ」。そういうことを、しみじみと考えさせられます。
ウォーレン・ベイティ、若いです。デビュー作です。プレイボーイはこれからというところです。一方、「理由なき反抗」でジュディを演じたナタリーウッドは23歳、若く美しいです。若きハリウッドスターたちが輝き、そして苦悩し、草原を吹き抜ける風のような見事なエンディングです。
「青春時代」とは、ほろ苦い思い出のつまった時代。いや、人は真剣に誰かと関わろうとする時、本当はいつもこういう苦悩の中にいなければいけないのかもしれません。悲しさよりも切なさで胸いっぱいになるエンディング。ただの青春映画とは呼びたくないのですが・・・。アカデミー脚本賞受賞。
出演:ウォーレン・ベイティ,ナタリー・ウッド,パット・ヒングル,ゾーラ・ランパート,サンディ・デニス
監督:エリア・カザン 1961年
BOSS的には・・・★★★★☆
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