2008.12.13
The Accidental Tourist 邦題:偶然の旅行者
人生はよく旅にたとえられます。快適な旅のためのガイドブックの類は数あるのですが、しかし快適な人生のためのガイドブックは、なかなかいいものに出会えないものです。一人息子を事故で亡くして初めて、妻とのすれ違いに気づいた一人の執筆家の、人生という旅の途中の出会いと別れの物語。
ビジネスマン向けに快適な旅行のためのガイドブックを執筆しているメーコン(ウィリアム・ハート)と彼の妻サラ(キャスリン・ターナー)。1年前の夏、一人息子が強盗事件に巻き込まれ不慮の死を遂げます。以来、二人の間には目に見えない溝ができ、人生に対する価値観の違いに気づいた彼女は離婚を決断し家を出ます。
一人になっても、取材のための旅行は続きます。しつけの悪い飼い犬の面倒を見てもらうため、メーコンは風変わりな調教師の女性オーナー、ミュリエル(ジーナ・デイヴィス)のワンニャン病院に愛犬エドワードを預けることになります。
サラはある意味、理想の妻。美人でメリハリがあり、いかにもデキル女性。一方の離婚歴のあるミュリエルは、とんでも長い付け爪やデリカシーのないアプローチ、教養があるとも思えない会話。そういうセッティングに対して、絶妙のキャスティングです。「めぐり逢えたら」同様、ここでもビル・ブルマンが名脇役、コメディタッチの花を添えます。
常識的に考えれば、どちらをとるかといえば明らかにサラに軍配が上がります。そもそも、メーコンが結婚したのは、ミュリエルタイプの女性ではなく、サラタイプ、いやサラそのものだったわけですから。名前からして、「サラ」に対して「ミュリエル・プチェット」ですから・・・。
彼の妹ローズの結婚式の日、介添えをするサラと参列したミュリエル。なんともいえないシーンです。
彼は原稿をタイプします。
「陥ってはならないのは、まやかしの安心である」
彼にとって、ミュリエルは「まやかしの安心」だったのか?それとも・・・
ジーナ・デイビスはこの映画での名演で、アカデミー助演女優賞を受賞します。監督は、「スター・ウォーズ/帝国の逆襲」や「レイダース/失われたアーク」の脚本家として知られ、「白いドレスの女」で監督デビューを果たしたローレンス・カスダン。音楽は、さりげなくジョン・ウィリアムスだったりします。
「愛」ってなんなのか?「愛がすべて」なのか?「愛はすべて」じゃないのか?そんなとてつもない命題の、ほんのちょっとした、もしかしたらソウかもしれない、ささやかなひとつの事例として・・・。今、幸せなあなたも。今、愛に彷徨ってるあなたも。「偶然の出来事に出会った旅の途中」のあなたも。
出演:ウィリアム・ハート,キャスリーン・ターナー,ジーナ・デイヴィス,エイミー・ライト,ビル・プルマン
監督:ローレンス・カスダン 1988年
BOSS的には・・・★★★★☆
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