2009.01.21
Network 邦題:ネットワーク
視聴率という「魔法の数字」が経営を左右するTV業界。「ギョーカイ」という非常識な日常の中で、視聴率アップに人間性をも失ってゆく人々を描いたドラマ。 最盛期には3割近い視聴率を誇った全米テレビ・ネットワークUBSのハワード・ビール(ピーター・フィンチ)のイブニングニュースも、最近は1割近くに低迷。1%が年間200万ドルに当たる放送業界では、ネットワークの顔である報道番組がこの体たらくでは前線からの撤退を意味します。 報道部長のマックス(ウィリアム・ホールデン)は、旧友ビールにキャスター解任を告げますが、自暴自棄になったビールは、番組で自らのオンエア中の自殺を予告し局内は大混乱。しかし視聴率は一気に5ポイントも上昇します。
これに目をつけた野心家のダイアナ(フェイ・ダナウェイ)は、ビールを利用して報道番組のショービジネス化を企画。USBを乗っ取ったCCAから送り込まれた新社長ハケット(ロバート・デュヴァル)に取り入り、企画をスタートさせます。
精神的に参ってしまった旧友を利用しようとする魂胆に怒ったマックスは、局を退社。しかし彼の意に反して、番組は驚異的な視聴率を記録する全米No.1の番組に成長します。
しかし、そもそも精神に異常をきたしたビールのアピールが売りだっただけに、ひょんなことで視聴者が離れ始め、窮地にたったハケットやダイアナは、とある奇策を講じるのですが・・・。
今や我が国のお茶の間でも、あたり前となってしまった感のある、あの異臭漂うワイドショー「報道番組」のはしりが生み出した悲劇です。^_^;
途中、マックスとダイアナのコイバナといいますか、不倫の物語も同時進行で展開します。あるべき裸の人間の姿を我々に教えるための逸話なのですが、ちょっと無理無理の感、無きにしも非ず。男前のホールデン、ちょっと女々しいか・・・。
フェイ・ダナウェイと言えば、「俺たちに明日はない」の壮絶なボニーなんですが、どうも美しくない。いや、昔見たときは、もっと美しいと思ったのですが、本人も「男勝り」と表現するほど、色気がなく、ぎすぎすしている。「テレビの申し子」という役柄ではあるのですが、ちょっと振りすぎではないかと。極細の眉は、当時の流行?
大好きなロバート・デュヴァルは、ええ感じです、若いです。はっちゃけ、ぶちきれてます。UBCのドン・コルリオーネです。
映画の途中、CCAの会長がビールを呼びつけ、自らの持論を洗脳するシーンでは、まさに今この時代に起こっているビジネスとマネーが世界の中心であり唯一の法であることをあれこれと説きます。
今から30年も前に、そんな時代の危うさに警告を発していたアメリカという国は、本当にすごい国だし、30年後の我々はその時代の警鐘をすっかり忘れ、ドル紙幣の束の上でダンスを踊ってしまっている。
「ギョーカイ」という場所が、世間の常識の正反対にあることはよくあるお話。そしてそんな中でも、自らの立ち位置や、自分は何者なのかをきちんと問いかけて生きてゆくことはできるはずだと、この映画はそんな警鐘も鳴らしているような気がします。
ああ、ますます「テレビ嫌い」になってしまった・・・。
出演:フェイ・ダナウェイ,ウィリアム・ホールデン,ピーター・フィンチ,ロバート・デュヴァル,ウェズリー・アディ
監督:シドニー・ルメット 1976年
BOSS的には・・・★★☆☆☆
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