2009.01.10
Pat Garrett and Billy The Kid 邦題:ビリー・ザ・キッド 21才の生涯
19世紀の終わり、フロンティアも終わろうとするニューメキシコを舞台に、かつては無法者仲間だった保安官パット・ギャレットとビリー・ザ・キッドの追うものと追われるものを描いた西部劇。邦題だと主人公はビリーですが、原題どおり実際の主人公はこの二人なのです!
1880年、ニューメキシコ。西部開拓も終わりを迎え、これまでの無法地帯も法と秩序が求められ始めていました。そんな中、もともと一匹狼の無法者だったパット・ギャレット(ジェームズ・コバーン)は、落ち着いた老後をと保安官の任を受け、かつて息子のように大事にしていたビリー・ザ・キッド(クリス・クリストファーソン)を捕らえる役目を担ってしまいます。
メキシコに身を隠せというパットの忠告を無視して、無法者の楽園フォート・サムナーに残ったビリーを、パットはやむなく逮捕します。が、パットの留守中に絞首刑を逃れ、ビリーは保安官助手2人を殺害して悠然と町を去ってゆきます。
町に戻ったパットは、バッジをつけたことで立場も善悪の考えも変わってしまった自分に疑問を抱きながらも、かつての友人ビリーを探して旅に出ます。保安官として、そして友人として、兄貴として。
パットを演じるクリス・クリストファーソン。この人実は、C&Wの歌手でもありますが、ニューシネマ時代の波に乗り、サム・ペキンパーに見出されて映画デビュー。なかなかの演技です。
でも圧巻はやはり名優ジェームス・コバーン。彼もペキンパー好みの男臭さむんむんが真骨頂で、この作品では渋さと同時に、悩めるワルを素晴らしく演じています。彼の主演映画では、もしかすると最高傑作では?
音楽担当はボブディラン、イントロにもエンディングにも途中の挿入歌にも、彼の歌声が流れます。それだけでは物足りないと、スクリーンにも度々登場。役者としてはまあぼちぼちですが・・・。
また同じくシンガーのリタ・クーリッジもビリーの恋人マリア役で出演、素敵な裸体を披露してくれます。ベッドシーンそのままに実生活ではクリス・クリストファーソンと結婚しますが、彼のアルコール依存症が原因で別れたとか。
ビリー・ザ・キッドは21年の生涯で20人近い人間を殺害したといわれています。今の法のもとだと大変な犯罪者です。しかしこの時代では、人数を除けば殺戮はあたり前の出来事だった。戦乱の世も、法と秩序以前の時代はいつでも。そしてアメリカ大陸の隅々に法の声が届いたのは、いまから百年ほど前のことなのです。
私たち日本人の歴史認識の中からは大きくはみ出した西部開拓時代。我が国でもいよいよ裁判員制度が始まりますが、法というものは善悪よりもあとから出来上がり、それについて来るものでしかないことを、私たちはしっかりと認識する必要があるとは思いませんか?
そして、人を、他人を信じるとともに、結局自分を守れるのは自分しかいないことを、誰も彼ももっと理解すべきではないでしょうか?
最後にもう一度言いますが、これはビリーが主人公の映画ではありません。配給会社の担当者は、次回プレス分からでいいので括弧書きでもいいから、(私が悪ーうございました。タイトルは「パット・ギャレットとビリー・ザ・キッド」です。)と、ちゃんと書くこと!
出演:ジェームズ・コバーン,クリス・クリストファーソン,ジェイソン・ロバーズ,ジャック・イーラム,リチャード・ジャッケル,ケティ・フラド,ボブ・ディラン,スリム・ピケンズ,L・Q・ジョーンズ,ハリー・ディーン・スタントン,R・G・アームストロング,ルーク・アスキュー,ジョン・ベック,マット・クラーク,チャールズ・マーティン・スミス,リタ・クーリッジ
監督:サム・ペキンパー 1973年
音楽:ボブ・ディラン
BOSS的には・・・★★★★☆
もっとムービー・アーカイブスはこちら >>> 「ムービー・インデックス」