2009.03.16
ベートーヴェン ピアノソナタ第8番 ハ短調 作品13「悲愴」(1798年)
ベートーベンの初期を代表する傑作であり、「月光」「情熱」とともに3大ピアノソナタの1曲です。
ベートーベンを語るには、恩師ハイドンとの出会いを忘れてはなりません。1972年、彼が22歳の時でした。程なく彼は、ピアノの即興演奏のヴィルトゥオーゾ(名手)と呼ばれるようになります。
しかしその後、持病の難聴が徐々に悪化。26歳になる頃には中途失聴者となります。音楽家として生きることを夢見ていた青年は、前途を悲観し悲嘆にくれます。そんな失意の時代に作られたのが、この「大ソナタ悲愴」でした。
第一楽章、彼の描く「悲愴」の姿は、得意のハ短調で始まります。しかし有名な第二楽章は、変イ長調のアダージョ。悲しみの淵にいながら、ふと仰ぎ見る青い空、白い雲、目に鮮やかな緑と生き物たちの交わす声。それら生きとし生けるものに包まれて、ちいさな命のかすかな暖かさが蘇るようです。
第三楽章は、再び主調に戻ったロンド形式。途中変イ長調のフーガが現れますが、苦悩は歓喜にまでは昇華しません。しかし、少なくとも生きることの人一筋の光明を見つけたと思えるのは、終楽章として相応しい楽曲となっているからでしょうか?
この頃まだ彼は、モーツァルトの影を追っていたことは確かです。しかしこの曲には、それまでの楽曲にはなかった豊かな人間的感情表現が織り込まれており、そのためロマン派ピアノソナタの夜明けとも言われているようです。
この曲を作曲した4年後には、自殺も頭をよぎった彼でしたが、その思いを有名な「ハイリゲンシュタットの遺書」として綴ることにより、自らの苦悩と正面から向き合い、生きる力と勇気を得て、その後の交響曲3番から始まる「傑作の森」(ロマン・ロラン)へと歩みを進めることになります。
おすすめ平均:
音の質が違った
偉大な作曲家の偉大な演奏
ベートーヴェンのピアノソナタはかくも美しい
ほんまもんのベートーヴェンの豊かな味わい。いいですねぇ、このピアノは
新しいベートーヴェンの誕生
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