2009.03.12
Le Mari de la coiffeuse 邦題:髪結いの亭主
女性の床屋さんの夫になると子供心に決めていた少年が大人になり、子供の頃の夢を実現する悲恋物語。「仕立て屋の恋」のルコント監督の描く、それはそれはフランスっぽい悲恋映画、というかヒューマンドラマでしょうか?
海沿いの町に住む少年アントワーヌ(アンリー・ホッキング)は、体臭の強い赤毛の美人シェーファー夫人(アンヌ・マリー・ピザーニ)に散髪してもらいながら、性に目覚めてゆきました。そして彼は心に決めます。「僕の結婚相手は理容師だ」と。
それから10数年がたち、すっかり大人になったアントワーヌ (ジャン・ロシュフォール)は、とある床屋で美しい女性理容師マチルド(アンナ・ガリエナ)を見かけます。「結婚相手はこの人しかいない。」そう心に決めた彼は、散髪の途中でプロポーズします。
散髪が終わるとマチルドは、まるで何も聞こえなかったかのように彼を店から送り出します。「強く念ずれば願いはかなう。」父のその言葉を胸に、3週間後再び店を訪れたアントワーヌに、彼女は承諾をするのでした。
こうして、願いかなって「髪結いの亭主」としての生活が始まります。ええ、これからです。さまざまな客を通して垣間見える人間模様、愛や憎しみの真の姿。貧しいながらも、自分たちの愛の形を育む二人。しかし、「愛は砂の城」、「美しき時は短く・・・」。
映画って、まああり得ないセッティングが映画らしくて面白いドッカン・ハリウッドものと、チープとは言い切れないものの、とにかく至極日常的なるものとがあります。で、フランス映画といえば、一般的にありそうでありえず、いやいやそう言えば・・・みたいな中に真実を埋め込むパターンが多い。この映画もその例に漏れず。
「仕立て屋の恋」は、男の命をかけた一途な愛、「男の愛」を貫く姿がテーマでしたが、こちらはマチルドの「女の愛」と言いましょうか、美しさと女としてのサガとしての愛を貫く、まるで秋に散る一枚の木の葉を見るような映画です。
若かりし頃この映画を観たときは、マチルドの身勝手な行動が理解できず、作品そのもののメッセージはわかっても心に沁みることはありませんでした。まあ、フランス映画慣れしてなかったということもあるかもしれませんが。
今になってあらためて見直してみれば、マチルドの気持ちも痛いほど分けるし、ひとりクロスワードをしながら、戻るはずのない彼女を待ち続けるアントワーヌの気持ちも理解できます。これも「愛」なのです。
エンディングの天井からのカメラ、すごいですねぇ〜、素晴らしいですねぇ〜、だからフランス映画ってやめられない。実はどこにでもある日常の裏に隠れた非日常性。こういう映画も大好きです。
出演:ジャン・ロシュフォール,アンナ・ガリエナ,アンリー・ホッキング,アンヌ・マリー・ピザーニ,ローラン・ベルタン
監督:パトリス・ルコント 1990年
BOSS的には・・・★★★★☆
おすすめ平均:
フランス映画独特のリズム感
パトリス・ルコント監督の不思議な感性に酔う映画
相性にもよると思いますが・・
映像が、きれい。
切ないエンディング・・・
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