2009.04.23

Movies

大魔神

日本の特撮作品の幕開けとなった「ウルトラQ」が円谷プロにより撮影された1965年。その翌年に、かつての大映(現在の角川映画)が時代劇と特撮映画をミックスした作品として世に出した特撮時代劇3部作の一作目。本作「大魔神」、「大魔神怒る」「大魔神逆襲」は、それぞれ独立完結した物語で、1966年に大映京都撮影所で同時に撮影されました。時代劇の新たな夜明け的作品?

時は戦国時代。丹波地方の山里の城下には恐ろしい魔神伝説がありました。武神によって山奥に封印された魔神が暴れ出さないようにと、村人たちは魔神封じの祭りをし、平和を祈っていました。祭りの夜、城内で謀反が起こり城主は討たれ、息子たちは魔人封じの巫女の手引きで武神像のそばの洞窟に身をひそめて暮らすことになります。

謀反を起こした家老大舘左馬之助は、やりたい放題の悪行三昧。しかし、遺臣たちや身を潜めて成長した城主の遺児忠文も捕らえられたため、巫女は左馬之助を訪ね、山の神の恐ろしさを語りその暴虐な行為を戒めます。が、耳を貸さない左馬之助は、巫女を斬殺し神像を破壊するよう命を出します。

山で安否を気遣う遺児の小笹は、自分の命にかえても兄たちを守って欲しいと武人像に祈りを捧げ、滝に身を投じようとします。その瞬間、大地はふるえ、神像は恐ろしい形相の魔神となって城下に現れます。

プロットとしては、「悪代官を懲らしめる」という私たちが慣れ親しんだ時代劇のセオリー、もしかすると刷り込みかもしれない、そういう勧善懲悪なのですが、懲らしめるのが恐い顔をした魔神。身長は公称4.5m、でも人を手の中に握ってる様子からは、人の十倍ほど、15mはありそうな・・・。まあ、細かいことはいいですが・・・。

変身前の姿からどうやら埴輪の武人のようなのですが、動き出してからの形相と緑色の顔が、なんとも恐い。悪いやつをやっつけてくれるとしても、やはり恐い。この辺は、東北地方の「なまはげ」みたいなものでしょうか?

この大魔神を演じた(?)のは、かつての毎日オリオンズ(現在の千葉ロッテマリーンズ)でプロとして活躍後、大映に入社した橋本力。この人、ブルース・リーの「ドラゴン怒りの鉄拳」に、日本人柔道場主として出演してました。

作品中、大魔神が暴れまわるシーンの粉塵は、実は芋の粉を使ったそうです。しかし、まばたきもしないでの熱演の結果、彼の目は芋の粉で血走り、かの「血走った大魔神の目」になったそうです。

本作には、うら若き高田美和や藤巻潤が登場。悪役左馬之助には、五味龍太郎ががんばって悪い雰囲気を撒き散らしています。

ユダヤ教のゴーレム伝説からヒントを得たと言われるこの大魔神の設定ですが、西洋のヒーロー物のように感情表現がなく、また見る側も感情移入しない。でも、義を見てちゃんと悪いやつをやっつけてくれる。コミュニケーションがとれそうにないので、ちょっと心配!ってこともままありますが・・・。

こういう魔神、つまり神のイメージって、結局古くからある自然神の身体化なんでしょうか?であれば、一般的に宗教観のない私たち日本人に善を施す神としては、こういうキャラが最適だったのではないかと思います。

「笑うセールスマン」で泣く子もいるそうですが、私はこの大魔神がコワカッタ・・・。

出演:高田美和,青山良彦,藤巻潤,五味龍太郎,島田竜三

監督:安田公義 1966年

BOSS的には・・・★★★☆☆

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おすすめ平均:5
5痛快 アラカツマ
5怖かった。
5カルトな名作
4大魔神に恐怖する
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