2009.06.04
雨あがる
人に優しすぎることがあだとなって浪人の身を続ける武士と、そんな夫をただ一人理解し支え続ける妻の姿を描いたヒューマン・ドラマ、いや時代劇かな?脚本はかの黒澤明の遺作、監督は長くクロサワのもとで助監督をしていた小泉堯史。第56回ヴェネチア国際映画祭「緑の獅子賞」受賞作品。
江戸享保の時代。剣術の達人でありながら、他人に優しすぎる性格が災いし、仕官の仕事が続かず浪人の身で旅を続ける三沢伊兵衛(寺尾聰)と、そんな彼をただ一人理解し、貧乏暮らしに耐えて彼を支える妻たよ(宮崎美子)。二人は大雨で河を渡れず、とある宿場町の安宿に足止めされていました。
宿には、彼らと同じく雨の上がるのを待つ貧しい町民たちがいました。ちょっとしたことでいさかいが起こる鬱々とした彼らの心を和ませようと、伊兵衛は禁じられている賭け試合をして、彼らに酒や食べ物をご馳走します。雨の上がった翌朝、散歩に出た伊兵衛は、若い侍同士の果し合いに遭遇し、はやる二人を戒めます。それを物陰から見ていた城主、永井和泉守重明(三船史郎)は、彼の振る舞いに感心し、藩の剣術指南番の話を持ちかけるのですが・・・。
脚本ではありますがクロサワ作品であり、愛弟子がメガホンを取り、三船敏郎の息子が出演する時代劇ということで、そうとう構えてしまいそうなのですが、そういう先入観をばっさりと一刀両断切り捨てて(笑)ご覧いただければ、なかなかハート・ウォーミングなドラマです。
私のような悪魔心溢れる人間は、伊兵衛のあまりの人のよさに初めは嫌悪感さえ抱いてしまうのですが、それをうまく展開しているあたり、さすが小泉監督!?芝居がかった三船史郎の演技も、逆に伊兵衛の人の良さを無理なく受け入れさせます。
そして、耐え忍ぶだけでなく、いざと言う時にはしっかりと自分の意見を主張する、普段はあまりに優しいたよを演じる宮崎美子が、目の前の出来事に右往左往する男どもを尻目に、どっしりと中心的というか重心的役割を果たしていて、物語自体が彼女を重心にして展開してゆきます。
とっても地味な作品ですし、とりたててメッセージを込めたものでもありません。ふっと肩の力を抜いてご覧いただける時代劇です。
出演:寺尾聰,宮崎美子,三船史郎,吉岡秀隆,原田美枝子
監督:小泉堯史 2000年
BOSS的には・・・★★★☆☆
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