2009.07.17
Alice's Restaurant 邦題:アリスのレストラン
世の中へのアンチテーゼとしてのフォーク・ミュージック。そのフォークの世界では知る人ぞ知るウディ・ガスリーの息子で吟遊詩人アーロ・ガスリーのエッセー的作品。監督は「俺たちに明日はない」のアーサー・ペン。アーロ自身が音楽も担当しています。
1960年代アメリカ。ベトナムへと送るため、若者には徴兵が行われていました。アーロ(アーロ・ガスリー)は、徴兵を逃れる為に大学に入りますがすぐに中退。酒場で歌を歌って、そこそこの生活をしていたアーロは、友人のロジャー(ジェフ・アウトロー)とともに、感謝祭を過ごすべく旧友のアリス(パット・クイン)を訪ねます。彼女はパートナーのレイ(ジェームズ・ブロデリック)とともに寂れた教会を買い受けて改装し、そこに住んでいました。
そこはいわばヒッピーの溜まり場。そして保守的な町の人々の険悪な視線をよそに、アリスは町でレストランを始めます。「アリスのレストラン」です。
彼らは「自由」を求め、実際「自由に生き」ます。しかし、裏返しとしての義務や責任のない暮らしは空しいことを、彼らも次第に理解してゆきます。
繁忙を極め、目に見えないリスクを背負い、よれよれになって生きている現代の企業戦士たち。ある日、ふと空を見上げた時、ふと立ち止まった街角で、私たちはボヘミアンのように、あるいはアーロやアリスのように「自由に生き」たいとふと考えます。自由に生きられたら、いかに素敵な人生になるだろうと。いかに自分らしく生きてゆけるだろうかと。
でも、何の束縛もなく「自由」へと解き放たれたとき、それは大平原に放たれた一羽の鳩のように、振り返る意味や飛ぶことを妨げようとする重さを懐かしく思うかもしれません。
この映画はそもそもは、戦争や環境問題、人権問題をテーマにした、静かでささやかなドラマなのですが、自由な生き方の彼らの背中に、そういう一抹の寂しさを感じるのは、単に私が歳をとったせいなのでしょうか?
出演:アーロ・ガスリー,パット・クイン,ジェームズ・ブロデリック,マイケル・マクラナザン,ティナ・チェン
監督:アーサー・ペン 1969年
BOSS的には・・・★★☆☆☆
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