2009.07.04
Enduring Love 邦題:Jの悲劇
作家でもある大学の教授が熱気球の事故に遭遇し、そこで出会ったある男からストーカー行為を受けながら、自らの真実の愛のカタチを見出してゆく心理サスペンスドラマ。主人公の教授は、いまや新生ボンドでその名を馳せるダニエル・クレイグが演じています。
作家であり、大学で教鞭をとるジョー(ダニエル・クレイグ)。ある日、長年の恋人で彫刻家のクレア(サマンサ・モートン)と郊外でピクニックを楽しんでいる最中、目の前を操縦不能となった気球が落下してきます。
現場にいたジョーを含めた3人の男たちが気球に駆け寄り、助けを求める少年を救出しようとしますが、突然拭いてきた突風に煽られ気球は急激に上昇。ぶら下がっていた彼らは次々と手を離して落下しますが、最後まで手を離さなかった男が、ついに落下し事故死してしまいます。
突然に悲劇に傍線と立ち尽くすジョー。そして彼はジェッド(リス・エヴァンス)という男と出会います。彼もまた、早めに手を話した為に助かった一人でした。その日から、ジョーの前に毎日のようにジェッドが立ち現れるようになります。
ジョーは作家ではありますが極端な現実主義者で、神を信じてはいないし、恋愛は生物学的な妄想だと学生たちに語って聞かせるような人間でした。子供嫌いで家庭的なるモノにも嫌悪感を抱き、そのことでクレアとは愛し合っていながら、長く結婚することも子供をもうける事もありませんでした。
一方のジェッドは、気球事故で心の痛みを持ってしまった者同士の絆の存在をほのめかしながらジョーに執拗に接触してきます。そんなジェッドを最初ははねつけ拒んでいたジョーも、怒りが稲妻のように良心をつらぬいたと同時に、狂気の垣間見えるジェッドと自分の間に、愛や人間に対する共通項を見出し始め、無視するどころか気になってしょうがない存在になってゆきます。
このあたりの展開はうまく出来ていて、次第に混沌としてくるジョーの理性をうまく表現しています。明らかにジェッドの行為はストーカー行為なのですが、そういう精神異常者からのアプローチとは別の視点で、ジョーの完璧だった理性的な生き方は脆くも破綻の危機を迎えます。
個人的には私も、感情的というよりは理性的とは言わないまでも、理詰めといいますか論理偏重な性格ですので、たまたまジョーのような境遇になったとき、はたして彼とは異なる結論や行動がとれるかどうか、怪しいものです。
そして、何時自分がジェッドの立場になるかもしれない、いやそういう素質と言いますか、心の奥底に潜む狂気の目を、視界の片隅に感じながら見ていました。
人は何故に、自分ではない人を愛するのか?何故男は女を、女は男を求め続けるのか?そのひとつの答えの潜むサスペンス作品。私的にダニエル・クレイグのボンドは認めてはいませんが、この作品の主人公としてははまり役。ということは、007をサスペンス映画として捕らえ直さない限り、やはり彼のボンドはありえないわけで・・・。
ちょっと振ってる作品ですが、広く沢山の方に、恋愛を語る作品としてご覧いただければと・・・。
出演:ダニエル・クレイグ,リス・エヴァンス,サマンサ・モートン,ビル・ナイ,スーザン・リンチ
監督:ロジャー・ミッチェル 2004年
BOSS的には・・・★★★☆☆
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