2009.07.21
Remember The Titans 邦題:タイタンズを忘れない
人種差別の嵐の中で、共学を始めた高校のフットボール・チームを通して、人々の差別の壁が取り払われてゆくさまを描いた実話に基づくスポーツ・ドラマ。デンゼル・ワシントンとウィル・パットンの二人が名演です。
公民権運動のさ中の1971年、ヴァージニア州。東部の町でも、まだまだ人種差別の壁は厚く、白人は黒人をさげすみ、黒人たちは白人を憎んでいました。そんな中、住民の反対を押し切って白人と黒人の高校の統合が行われ、フットボール・チーム"タイタンズ"が結成されます。
ヘッドコーチとなって赴任してきたのは黒人のハーマン・ブーン(デンゼル・ワシントン)。これまで白人選手だけのヘッド・コーチを務めていたビル・ヨースト(ウィル・パットン)は、自分の地位が黒人に奪われたことにショックを受けますが、やむなくアシスタント・コーチを引き受けることになります。
夏期休暇の間に強化合宿に出かけたチームは、出発初日からいざこざを繰り返します。しかし、フットボールとその厳しい練習を通して、ブーンは彼らにチーム・スピリットや戦うことの意味、勝つことへの強い意志を芽生えさせ、他人種への憤りを戦う意思へと変えてゆきます。
そしてシーズン・イン。地区予選が始まり、ブーンに鍛え上げられた若者たちは、勝利を重ねてゆきますが・・・。
この映画から遡ること14年前。南部のアーカンソー州リトル・ロック、セントラル高校での共学に関する騒動をご存知の方も多いはず。21世紀になっても完全に消えたとは言えないアメリカの抱える人種問題は、オバマが大統領になった時にも話題に上りました。少しずつでも確実に変化しつつあるこの問題、いまから40年近く前に実際にあったお話です。
人種差別問題を取り上げた作品は数多く、まあ基本的なプロットでは共通してるわけですが、この作品ではフットボールのスピード感や醍醐味を楽しめるとともに、あちらこちらにささやかなピースも盛り込まれて、大儀を除いても、ヒューマンドラマとして十分堪能できます。
差別に基づくいざこざを繰り返す若者たちに、「ゲティスバーグの戦いで命を散らした若者となんら変わらない!歴史から学べ!」と説くブーン。純粋な若者たちは次第にことの真実を悟り始めますが、古い大人たちは簡単には納得できない。いつの時代もどの国でも繰り返されている葛藤です。
実話に基づいている作品にありがちな、ドラマティックさへの物足りなさはありますが、フットボールのスピード感と物語の展開がうまく、カットし過ぎではと思うほど潔いカットでお話はドンドンと進んでゆきます。物語がフィクションであり、もっと自由に脚色できれば、★4つになったかも!正直感動、うるうるしました。
単に「やっぱ、スポーツはいいよね!世界平和万歳!」というようなことではなく、結局すべての悪との戦いは、最終的にはおのれ自身との戦いであると、そんなことを再認識した映画です。
出演:デンゼル・ワシントン,ウィル・パットン,ウッド・ハリス,ライアン・ハースト,キップ・パルデュー
監督:ボアズ・イェーキン 2000年
BOSS的には・・・★★★☆☆
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