2009.07.11
THE QUEEN 邦題:クィーン
1997年、世界を駆け巡った英国元皇太子妃ダイアナの事故死のニュース。一切のコメントもせず沈黙を続ける王室に集中する非難。その時、女王エリザベスは何を思い、何をしようとしていたのか。女王を見事に演じきったヘレン・ミレンは、アカデミー賞主演女優賞ほか多くの映画祭で受賞。名演です。
1997年8月31日、深夜のパリ。パパラッチの執拗な追跡をかわしながら疾走する黒いベンツが、地下道の柱に激突します。華々しく王室入りし、スキャンダルに翻弄され、子供を残して王室を去り、一人の女性として生き始めた、元皇太子妃ダイアナに訪れた突然の死でした。
世界中を衝撃と深い悲しみで覆った彼女の突然の訃報。バッキンガム宮殿前には、つぎつぎと花束が手向けられますが、王室からは一切の公式声明はありませんでした。そして人々の悲しみの矛先は、冷淡とも思える態度を取り続ける女王エリザベス(ヘレン・ミレン)と王室一家に向けられます。
折りしも長年の保守政権を破って当選した労働党のブレア首相は、そんな王室と女王に対し、持ち前の革新的な思想とやりかたで、批判的に彼女に接するのですが・・・。
もう10年も前の出来事なのですね。あの時、はやり一人の庶民として、ダイアナサイドにいた私は、ただ伝統を守ろうとするだけの守旧的な王室の態度に怒りさえ感じたものでした。この映画に登場する多くの人々と同じく、間接的にダイアナを死に追いやったのは「王室と、そのかび臭い伝統」だと。
たしかにあの顛末は、伝統と革新、自由と責任とのせめぎあいだったことがこの映画でもわかります。そして伝統に凝り固まった王室の象徴である女王も、実はただのひとりの女性であると言うことを、しなやかにささやいてくれます。
ややもすればスキャンダラスに、タブロイド的に捉えてしまいがちなこの事件を、イギリスの歴史、あるいは異国の私たちも守り抜くべき伝統という視点から捉えた、そういう意味では逆に「革新的な」作品です。
王侯貴族といえば、私たちはまるで絵本の中の物語のように、あるいは古い絵巻を見るように、まるで血の流れてはいない人たちのように捉えがちになるのですが、歴史や伝統をしっかりと守り、また私たち国民の偉大なる母として、敬愛なる祖母として見守っているのは、か弱く時に迷い、時に打ちひしがれる、しかし毅然と前を向いて生きようとする一人の人間であることを、あらためて認識させられます。
「女王陛下、万歳!」
出演:ヘレン・ミレン,ジェームズ・クロムウェル,アレックス・ジェニングス,ロジャー・アラム,シルヴィア・シムズ
監督:スティーブン・フリアーズ 2006年
BOSS的には・・・★★★★☆
おすすめ平均:
英国女王から遠い日本人にとっては新鮮な視点
退かぬ、媚びぬ、顧みぬ
エリザベスを持ち上げた映画
ヘレン・ミレンが良かった
ダイアナ妃の事故死とエリザベス女王の孤独
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