2009.09.26
Ossessione 邦題:郵便配達は二度ベルを鳴らす
ファシスト政権下の北イタリアを舞台にしたラブ・サスペンス。映画通的に言えばヒューマン・サスペンス?イタリアの巨匠ヴィスコンティのデビュー作です。
北イタリアを流れるポー川沿いの街道レストラン・ドガナの主ブラガーナ(ジュアン・デ・ランダ)。一回りも年下の妻ジョヴァンナ(クララ・カラマイ)は、粗暴な夫に辟易しながら暮らしていました。
ある日、レストランを訪れた文無しの放浪者ジーノ(マッシモ・ジロッティ)の若さと情熱に魅せられ、夫の留守の間に二人は激しく愛し合います。意を決して二人は駆け落ちをしますが、貧しくとも安定した今までの生活を捨てることが出来ない彼女は、結局引き返すことになります。
残されたジーノは、一人列車に乗り込みますが、そこでスペイン人の旅芸人イスパ(エリオ・マルクッツォ)と知り合い、気ままな旅を続けることにします。そこに偶然立ち寄ったブラガーナとジョアンナ。ジーノを連れ帰るという夫に従うジョヴァンナでしたが、若い二人は帰路、泥酔したブラガーナを交通事故に見せかけて殺害してしまいます。
原作はジェームズ・ケインの同名小説ですが、作者の了解を得ないまま映画化し、公開数日で上映禁止になったというのはあまりにも有名なお話。そういうこともあり、アメリカで本作が公開されたのはヴィスコンティの死後、作品完成から実に34年後の1976年でした。
第2次大戦下のムッソリーニ政権下でこんな作品を撮ってデビューしたヴィスコンティ。映像やカメラワークの芸術性とともに、なんならただの愛欲犯罪映画でしかない本作を、いわゆる映画通をうならせる作品へと消化してしまっている。こんな作品が1940年代に作られたという事実は、その後の映画人を悩ませる事になるし、それゆえ彼を巨匠と呼ぶ所以なのでしょう。
個人的には、マーラー好きということもあり、最晩年の「ベニスに死す」(こちらも至極単純なお話ですが・・・)が好きな映画ですが、昼ドラのようなテーマにのめり込ませる彼の手腕には脱帽です。
ヴィスコンティ自身、伯爵でありバイセクシャルであり共産党員であるといった、映画そのもののような生き様と、映画界に入ったきっかけが、ココ・シャネルの紹介でジャン・ルノワールのもとに弟子入りしたことなど、その生い立ちに彼らしい色付けをするのはむしろたやすい環境だったのかもしれません。
原題は「郵便配達は二度ベルを鳴らす」ですが、郵便配達人の話ではなく、配達人も出てきません。そもそも不審者でないことを知らせる意味で、郵便配達人が二度ベルを鳴らすことからきたタイトルのようですが、偽りを隠すため、あるいは真実を隠すため同じことが2回ずつ繰り返されますが、無実は証明されず、自然なる人間の「サガ」だけがシミのように後に残されます。
「映画」です。
出演:マッシモ・ジロッティ,クララ・カラマイ,ジュアン・デ・ランダ,エリオ・マルクッツォ,ディーア・クリスターニ
監督:ルキノ・ヴィスコンティ 1942年
BOSS的には・・・★★★★☆
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