2009.09.09

空の写真館

夏がゆく

私は

夏に生まれた

それは

ひぐらしの鳴く頃

まだ蒸し暑い

夏の夜中

二人の子供を

幼くしてなくした

母から生まれた

そして

彼女の眼差しに

包まれながら

しだいに涼しくなる

数えるほどの

日々の中で

生まれたばかりの私は

心地よさを感じていたのか

それとも

どんどんと冷えてゆく

澄んでゆく空気に

恐れおののいて

いたのだろうか

今また夏が

終わろうとしている

せみ時雨に包まれて

まぶしい日差しに

すっかりと焦がされた

夏が終わろうとしている

あの時と同じように

あの生まれたばかりの

初めて世界を見た

あの時と同じように

そして私は

あなたに挨拶する

あの時と同じように

はじめまして

新しい秋さん

秋さんがひっそりと

左の頬で

微笑んだ

気がした

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