2009.10.05

CLASSICS

クロード・ドビュッシー ベルガマスク組曲第3曲「月の光」

一昨日は中秋の名月でしたが、あいにく夜半前から曇ってしまいました。昨日は翌日だったのですが、一昨日よりは満月に近かったような・・・。

月をながむれば聞こえくるのは・・・。

その時もし、悲しみに打ちひしがれていたり何かに絶望していたりすると、間違いなくベートーヴェンに手が伸びます。しかし、穏やかにのびやかに、ゆるりと昇り来る満ちた月を眺める夜には、ドビュッシーの「月の光」ですね。

1962年、フランスの貧しい家に生まれたドビュッシーは、10歳からパリ音楽院で学びます。そして在学中の18歳の時には、チャイコフスキーのパトロンで有名なフォン・メック夫人の長期旅行にピアニストとして同伴します。

24歳の時に「ローマ大賞」を受賞し5年間のイタリア留学を手に入れますが早々に帰国。その理由のひとつに、意中の人ヴァニエ夫人の存在があったといわれています。

そのヴァニエ夫人の為に書かれたいくつかの曲のうち、「ベルガマスク組曲」としてまとめられたピアノ曲の中のポール・ヴェルレーヌの詩集「艶なる宴」の一遍「月の光」からそのタイトルが取られたのが、今日ご紹介する第3曲の「月の光」です。

まずは、ヴェルレーヌの詩をご紹介しましょう。


月の光 野村喜和夫訳

あなたの魂は選びぬかれたひとつの風景
とりどりの仮面や舞踏に眩惑はつのるけれど
リュートを弾きながら踊りながら
その夢幻的な仮装の下は
ほのぼのと悲しい

短調の調べに乗せて
恋の勝利とわが世の春を歌いながらも
自分たちの幸福を信じてはいないようだ
その歌は月の光に溶けてゆく

悲しくて美しい静謐な月の光に
するとその月の光は、木々の鳥たちを夢見させ
噴水をうっとりとすすり泣かせる
大理石に囲まれてすらりと吹き上がる噴水を


変ニ長調の曲は、そのほとんどがピアノで演奏されます。夜想曲に相応しい、優しく切ない調べ。

晴れ渡った夜空に浮かんだ淡く輝く月。流れる雲間から除く穏やかで親しげな笑顔のような月。波のない湖畔にその姿を映し、空と水に浮かぶ二つの銀の月・・・。

あなたの目にうつる月は、どんな顔をしていますか?


月の光 〜ドビュッシー / ピアノ名曲集

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