2009.10.12
La Strada 邦題:道
人間が生まれ持った孤独という宿命と、それが演じられる人生と言う舞台を、日常の中で描いた巨匠フェリーニの代表作のひとつ。彼の名声が確立した作品です。 ザンパノ(アンソニー・クイン)は、市や街頭で芸をしながら放浪する旅芸人。助手をさせていた女が死んでしまったため、その妹であるジェルソミーナ(ジュリエッタ・マシーナ)をただ同然で買い取ります。彼女の家はあたり前のように貧しく、わずかな金より食い扶持が減るほうが大事でした。粗野で暴力的なザンパノと、頭は弱いけれど素直な心のジェルソミーナの旅が始まります。
道化の芸を覚え彼の助手をしながら、新しい生活にささやかな希望さえ見出していたジェルソミーナでしたが、内縁関係にある自分など存在しないかのように、酔っ払っては次々と見知らぬ女を連れ込む彼に嫌気がさし、ある夜街に逃げ出します。
町では陽気な綱渡り芸人に出会い、ひと時の陽気さを取り戻しますが、追いかけてきたザンパノに見つかり連れ戻されてしまいます。そしてとあるサーカス団に合流することになる二人。そこにはあの夜の綱渡り芸人もいました。
その芸人とザンパノは古くからの知り合いで、ことあるごとにザンパノをからかい彼を逆上させていました。ある日、ジェルソミーナの芸のことでついに切れてしまったザンパノは、ナイフを持って彼を追いまわし、とうとう二人とも留置場に入れられてしまいます。
先に留置場から出てきた芸人は、ジェルソミーナに一緒に行こうと誘いますが、彼女は自分が行ってしまうとザンパノが一人になってしまうと断ります。芸人は彼女に、「道端の石ころだって何かの役に立っている。君だってそうだ。」と言い残して彼女の前から去ってゆきます。
留置場を出たザンパノと再び旅を始めたジェルソミーナ。ある日、パンクで車が立ち往生している芸人に再会したザンパノは、仕返しとばかりに彼に殴りかかります。
この作品が作られたのは1954年。ムッソリーニが連合軍に降伏し、第2次世界大戦が終結して10年。敗戦国として、まだまだ混乱の最中にこのような作品が生まれたこと自体、奇跡とも言えるでしょう。
基本的に芸術家や作家たちは反ファシズム、反ナチズムなのですが、この作品はあからさまな反戦映画ではありません。それよりもかつて、常に世界の芸術やアートを牽引してきたイタリア人の末裔としての責任感に突き動かされ、一方で20世紀のルネサンスともいえる人間復興というテーマに立ち向かわなければならなかった。
極限の貧しさと、己の肉体をつかった単純な芸による収入、そして旅から旅の毎日。そこで懸命に今日を生きる人間を描くことで、逆に明日を信じ明日への希望を持たせようとしているように思えます。
逆に現代の満たされた暮らしを生きる私たちは、知らず知らずのうちにザンパノとジェルソミーナになってしまっているのではないか?そういう意味では、当時確立されたばかりのヴィスコンティらによるネオ・リアレズモとは立ち位置が異なるように思います。
ニーノ・ロータの調べにのって、私たち自身を代弁しながら旅を続ける二人の結末は、美しくも悲しいものでした。アカデミー外国語映画賞受賞。
出演:アンソニー・クイン,ジュリエッタ・マシーナ,リチャード・ベイスハート
監督:フェデリコ・フェリーニ 1954年
製作:カルロ・ポンティ
脚本:フェデリコ・フェリーニ
音楽:ニーノ・ロータ
BOSS的には・・・★★★★☆
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