2009.12.14
Murder of the Inugami Clan 邦題:犬神家の一族
我が国の推理小説の第一人者、横溝正史原作の小説を、これも我が国屈指の映画監督、市川昆が2度にわたって映画化した、名探偵金田一耕助が謎解きに活躍する推理ドラマ。
終戦間もない信州。製薬で巨万の富を築いた犬神家の創始者である犬神佐兵衛は、身内が血で血を争う結果になるような不可解な遺言状を残して他界します。犬神家の顧問弁護士古館恭三の助手、若林は、莫大な遺産の相続を巡る骨肉の争いを予感し、東京で私立探偵業を営む金田一耕助に協力手紙を書きます。
早速、信州に出向いた金田一耕助のもとを訪れた若林は、何者かによって殺害されてしまいます。そしてそれは、おぞましい連続殺人の序章に過ぎませんでした。
学生の頃、推理小説を読み漁っていた私は、クイーンやクリスティはもちろんのこと、松本清張や横溝正史も読み漁りました。その中でも、江戸川乱歩の流れを汲む横溝作品のおどろおどろしさは、ジョン・ディクスン・カーのスリラーとも異なる独特のものでした。
そんな横溝スリラーの世界を映像化した76年の作品はかなり衝撃的で、一瞬の空の蒼さも一筋の日差しもイメージできない原作のもつ薄ら暗さを見事に表現しています。一般的にもこの版は「日本映画の金字塔」のひとつと称されています。
あの湖の水面からさかさまに足が伸びているシーン、有名ですよね!
そして金田一耕助と橘警察署長が同じメンバーでの30年後のリメイク版は、ヒロインの島田陽子が松嶋菜々子となり、金田一が宿をとる旅館の女中はるが坂口良子から深田恭子となります。
全体にスムーズに物語が展開するのですが、なにやらあの横溝ブラックが薄まったと言いますか・・・。某コーヒーのコマーシャルではないですが、「クリームの入ったコーヒーなんて・・・」と言う感じ。
この版から横文字のタイトルもつけられたことから、海外を意識した作品として仕上げられているのでしょうが、何度か見たという理由からではなく、なんとなく同じ展開の違う映画を観ているような違和感を感じます。
松島菜々子自体は大ファンなのですが、実は俳優としての彼女はあまり評価してなかったりする。そういう理由ではく、ブラックを薄めてしまった一因としてどうも個人的には彼女が一番のミスキャストのような気もします。
ということで、76年版と06年版で評価の異なる本作。映画ファン、推理小説ファンにはできれば76年版をご覧いただきたいのですが、ご家族ご一緒なら06年版でもよろしいかと。
〔1976年版〕
出演:石坂浩二,高峰三枝子,三条美紀,草笛光子,あおい輝彦,地井武男,川口晶,川口恒,金田龍之介,小林昭二,島田陽子,坂口良子,小沢栄太郎,加藤武 カトウタケシ,大滝秀治,寺田稔,三木のり平,横溝正史,岸田今日子,三國連太郎
監督:市川崑 1976年
製作:角川春樹,市川喜一
音楽:大野雄二
〔2006年版〕
出演:石坂浩二,松嶋菜々子,尾上菊之助,富司純子,松坂慶子,萬田久子,葛山信吾,池内万作,螢雪次朗,永澤俊矢,尾藤イサオ,三谷幸喜,林家木久蔵,深田恭子,奥菜恵,岸部一徳,草笛光子,中村玉緒,加藤武,中村敦夫,仲代達矢
監督:市川崑 イチカワコン 2006年
製作:黒井和男
音楽:谷川賢作
BOSS的には・・・★★★☆☆
おすすめ平均:
やっぱりこれでなくっちゃ
駄作を量産し続けるフジテレビのリメイク版とは比較になりませんが
死した人間の業が、残された血族をも狂わせる、これは名作です。
追悼・市川崑
横溝ワールドの原点
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BOSS的には・・・★★☆☆☆
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