2009.12.05
Otto e Mezzo 邦題:8 1/2
「映像の魔術師」フェリーニ監督作品。映画というよりは映像作品とでもいいましょうか?
主人公グイド(マルチェロ・マストロヤンニ)は、円熟期を迎え映画監督としての名声も得ていました。医者の勧めで湯治場にやってきた彼。しかし彼を追って愛人のカルラ(サンドラ・ミーロ)や妻のルイザ(アヌーク・エーメ)も彼のあとを追ってやってきます。
肉体だけで結ばれた愛人と冷えてしまった妻との関係。そして新しい作品に対するプレッシャー。そんな狭間に落ち込んだグイドの心は、少年時代に遡ったり、今は亡き両親との再会という夢想と現実が入れ替わり立ち代り現れる世界に迷い込みます。
正直、私では物語の展開が意味するものは理解できませんでした。ビジネスの仕組みの中で次々と生み出される出来すぎたフィクションとしての映画への問題定義なのか、はたまた映画監督という、これまた俳優と同じように自己表現と役柄の狭間で苦悩する姿を映像化したかったのか?
それにしても映像は素晴らしい。どのカットも静止にすれば、そのままポスターやグラビア、あるいは作品としての「写真」になすようなシーンの連続。まさに「映像の魔術師」です。
仮構と現実が、コインの裏表のように展開するこの作品は、映画というものが持つさまざまな2面性、あるいは人生や恋、いやそもそも人間自体が持つ「生と死」という相対する二面性への彼らしい「愛情表現」なのかもしれません。
次々と放たれる登場人物の会話も、物語の展開同様にかみ合わず、意味があるとも思えない。しかし、そもそも私たちの生、日常そのものが本来そういうものではないのか?それでも、ひとつの宇宙が宿っている一人の人間を、それぞれに愛して止まないフェリーニの、素直な心情吐露なのかもしれません。
音楽は、「道」でタッグを組んだニノ・ロータ。映画ファンというよりは、フォトグラファーやアーティストの方にお勧めします。1963年度アカデミー外国語映画賞・衣裳デザイン賞受賞作品。
出演:マルチェロ・マストロヤンニ,クラウディア・カルディナーレ,アヌーク・エーメ,サンドラ・ミーロ,ロッセーラ・ファルク
監督:フェデリコ・フェリーニ 1963年
BOSS的には・・・★★★★☆
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