2009.12.30

Movies

The Drowning Pool 邦題:新・動く標的

アメリカの推理小説というよりもハードボイルドな探偵物作家ロス・マクドナルドの小説「動く標的」の映画版の続編。原作は同じくマクドナルドの「魔のプール」、主演は前作同様ポール・ニューマン。

ロスで探偵業を営むルー・ハーパー(ポール・ニューマン)のもとに仕事依頼の電報が舞い込みます。南部の町に出向いた彼の前に現れた依頼人は、6年ほど前に彼と1週間ほどの情事を過ごした女性アイリス・デベロー(ジョアン・ウッドワード)でした。

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彼女と別れモーテルに戻った彼を訪ねてきたのは見ず知らずの少女スカイラー(メラニー・グリフィス)。彼女の誘いを断り追い返しますが、少女に対する性的暴行の容疑で逮捕連行され、刑事部長ブラウサード(トニー・フランシオサ)に銃を取り上げられます。謎の少女スカイラーはアイリスの実の娘だったのです。

2流の劇作家の夫との形だけの結婚生活を続けているアイリス。リッチな生活自体を仕切っているのは夫の母親オリビア・デベローでした。男勝りで出来の悪い息子を溺愛している彼女を憎むアイリス。そしてある日、オリビアは死体となって邸宅近くの入り江に浮かんでいるのを発見されます。

学生の頃すっかりはまった推理小説・探偵小説。クリスティやクイーンをすべて読破しました。そしていわゆるハードボイルドものにももちろん突入。ダシール・ハメットやレイモンド・チャンドラーを読み終えた私が向かったのがロス・マクドナルドでした。

「人の死に行く道」「象牙色の嘲笑」「犠牲者は誰だ」「ウィチャリー家の女」「縞模様の霊柩車」・・・。マクドナルドの物語に登場する主人公は、離婚暦のあるちょっとくたびれたリュー・アーチャー。彼の大ファンでした。

私にとっての早川ミステリーのビッグ・ヒーローを演じるのは、当時売り出し中のポール・ニューマン。そして彼は「ハスラー」「ハッド」の成功によって人気を得たばかりであり、前作の66年「動く標的」の主人公を、リュー・アーチャーからルー・ハーパーに自ら主張して変更し、知的でハードボイルドな探偵役に挑戦します。

小説から勝手にイメージしていたリュー・アーチャーとはちと違うような気もしますが、さりとて当時の男優で誰がより適任かと言うと、これまた答えに窮してしまう。まあ、ルー・ハーパーですから、こんな感じでもいいのかと。

実の夫人であるアカデミー女優ジョアン・ウッドワードとの共演も、公開当時は話題でした。彼女はプロット上は微妙な立場ではありますが、それほど難しい役柄ではありません。むしろ娘役の当時18歳のメラニー・グリフィスの方が難しいくらい。彼女は、これも私の大好きな映画「ワーキングガール」の13年前。若いです。

60年代後半、公民権運動とベトナム反戦運動にあまりにも積極的に加わった為に、ホワイトハウスのブラックリストに載ってしまったポール・ニューマン。その熱血漢、正義への情熱と、人として個人としての限界の距離感を感じた彼は、本作公開の年に自らレーシングチームを結成し、レーサーとしてのキャリアも積み始めることになります。

もしかするとさらっと観ただけでは意味不明で終わってしまうかも。ちなみに現時点ではDVD化はされていません。

出演:ポール・ニューマン,ジョアン・ウッドワード,アンソニー・フランシオーサ,マーレイ・ハミルトン,ゲイル・ストリックランド,メラニー・グリフィス,リンダ・ヘインズ

監督:スチュアート・ローゼンバーグ 1975年

原作:ロス・マクドナルド

BOSS的には・・・★★★

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