2010.01.23
野獣死すべし
通信社のカメラマンとして戦地を渡り歩く中で正気を失ってしまった青年が、つぎつぎと犯罪を重ねてゆくハードボイルドタッチのドラマ。セックスと暴力を除くと何も残らないと言われる作家大薮春彦の原作・松田優作主演・角川映画シリーズの一作。
裏社会にも顔が利く警視庁捜査一課の岡田警部補(青木義朗)が、土砂降りの夜に何者かに襲われ殺害されます。犯人は奪った拳銃でカジノを襲撃。組員3人が殺害され、売上金が奪われます。
犯人は伊達邦彦(松田優作)。通信社のカメラマンとしてアンゴラやレバノンといった戦場を渡り歩き、退社して表向きは翻訳の仕事をしていました。レンズ越しに見たあまりにも凄惨な現場の積み重ねは、彼の野獣の血を目覚めさせ、それは平和で安穏な社会に対する挑戦に代わります。
クラシックファンでもある伊達は、ショパンのピアノコンチェルトが響き渡るコンサート会場で外資系の会社の秘書をしている華田令子(小林麻美)と出会います。
次の標的を大手都市銀行に定めた伊達は、高級宝石店の店員を陥れて警備の状況を把握し、一人で犯行に及ぶのはリスクが高いと判断。大学の同窓会を開いたレストランで、同じように野生の目をしたウェイター真田(鹿賀丈史)に目をつけ、彼の素性を調べ上げます。
ハリウッド映画だと、この展開はだいたい反戦映画になるのですが、こちらはどちらかと言えばハードボイルドな展開。何でも松田優作のイメージが狂気を帯びた若者という原作者の意図とは若干異なることから、クランクインの際にはもめたとか。
確かに伊達、野獣というよりは狂気がにじみ出ています。しかも強烈なクラシック・ファンときたもんだ。ガンマニアだし。どっかの誰かさんみたい。彼はかつて松田優作の大ファンだったらしいし、髪も天パーだし・・・。
お話を作品に戻して、村川透の映像はやはりどこかフランスめいてる。いや70年代初頭のニューシネマの影響なのかもしれませんが・・・。最初の格闘シーンとか、ちょっと長いなと言うのが気になりますが、以降の駆け足作品を見すぎたせいかも知れません。
かなりエロイシーンや暴力的なシーンもありますので、お子様にはお勧めしませんが、最近「草食男子」と言われてほくそえんでる若者の皆さんに是非見ていただいて、野性を取り戻していただければ・・・。いや野性を取り戻すと「死すべし」となりますから、取り戻すのはほどほどに・・・。
出演:松田優作,小林麻美,室田日出男,根岸季衣,風間杜夫,岩城滉一,泉谷しげる,佐藤慶,青木義朗, 鹿賀丈史,安岡力也
監督:村川透 ムラカワトオル 1980年
BOSS的には・・・★★★☆☆
おすすめ平均:
ベストパフォーマンス。
たけしサイコー!!
松田優作の役者魂
ロシアンルーレットのシーンはイイ
異様な緊迫感とナルシスチックな狂気が充満するカルトな傑作。
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