2010.01.29
VOCES INOCENTES/INNOCENT VOICES 邦題:イノセント・ボイス
エルサルバドルにおける泥沼の内戦に巻き込まれてゆく子供たちの悲劇を描いた反戦ドラマ。373本目の投稿です。
1980年、クーデターによる政権交代が続いていたエルサルバドルは、アメリカ合衆国の後押しを受けた政府軍と、左翼ゲリラ組織ファラブンド・マルティ民族解放戦線(FMLN)との間で内戦状態に突入します。
11歳になる少年チャバ(カルロス・パディジャ)は、母(レオノア・ヴァレラ)と姉ロシータ、弟リカルドとの4人暮らし。内戦を逃れてアメリカに一人旅立った父の代わりに、家族を守るよう母から言われていました。
貧しいけれど幸せな暮らし、と思いきや夜ともなれば政府軍の兵士とゲリラが人々の住む村を舞台に銃撃戦を繰り広げ、何の罪もない人々が犠牲となってゆきます。少しでも貧しい暮らしの足しにと、学校に通いながらも稼ぎをしたり、少年らしく友人たちと遊んだり、クラスメイトに恋したり。
しかしそんな彼が子供でいられるのもあとわずか。12歳になれば政府軍の兵士として召集されるのです。
政府軍の徴用の日、屋根に身を隠して難を逃れた子供たちは、夜中に村を抜け出し、ゲリラの潜む森を目指します。
私がものすごく感動し、しかも二度と観たくない映画のひとつに、オリバー・ストーン監督の「サルバドル/遙かなる日々」があります。アメリカ人ジャーナリストを通して見たエルサルバドル内戦を描いた映画です。それはもう、とてもとても「悲惨」です。凄惨なんですが、それ以上に悲しいくらい悲惨です。
本作は同じ題材を、少年を通して描いた作品。そのことで悲惨さはやや薄められてはいます。しかし特に私たち日本人が全く知らない「内戦」の現実、TVなどで見るかぎりの中東での米軍による地元ゲリラの掃討作戦の映像とは全く違う映像、地元の住民たち、何の罪もない人々がどうすることも出来ないままに巻き込まれ、死を突きつけられる姿を目の当たりにします。
子供は未来。私たちは何の為に生きているのかと聞かれた時、「未来に今を残すため」という答えを支持される方は多いはず。それは、子供たちに託す未来。しかしそんな子供に「銃」を持たせなければならない大人の社会、そんな世界には輝かしい明日はないし、未来に何も残せはしない。できることと言えば「破壊」だけです。
徹底的な破壊と無数の命の犠牲の遠い先に、未来を築くことは出来るでしょう。今のこの国のように。しかしその礎がなんであるのか、「今の幸せ」を感じるたびに私たちは、そのことを思い起こす必要があるのかもしれません。
演技がどうこうではなく、ドキュメントとしてご覧下さい。2005年ベルリン国際映画祭児童映画部門最優秀作品賞受賞作品(長い!^_^;)。
出演:カルロス・パディジャ,レオノラ・ヴァレラ,ダニエル・ヒメネス・カチョ
監督:ルイス・マンドーキ 2004年
BOSS的には・・・★★★☆☆
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