2010.02.25

CLASSICS

ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト レクイエム ニ短調 K.626 (1791)

4年前のトリノ・オリンピックで荒川静香が銀盤を舞ったのはプッチーニの歌劇「トゥーランドット」。そして今年のバンクーバー・オリンピックで安藤美姫がSPで使ったのがモーツァルトのケッヘル番号が最終の626番、「レクイエム」です。

私は現在はクリスチャンではなく仏教徒(真言宗)なのですが、私の葬儀には「クラシック馬鹿が逝っちまった~」と、この曲を大音量で流してもらいたいと願っています。読経の合間でもいいので。

といっても、その時分にはやれヴェルディがいいだとか、フォーレがいいだとか言い出すかもしれませんが???ちなみにこの3つを「3大レクイエム」と世間では呼びます。

で、今日はモーツァルトの遺作、レクイエムです。

1791年、モーツァルト35歳。30歳を過ぎた頃から彼の名声も枯れ始め、生活は苦しかったようです。当時ヨーロッパを巡業していた旅一座のオーナー、シカネーダーはそんな彼を見かねて大作「魔笛」(K.620)の作曲を依頼します。

そして皇帝レオポルト2世の戴冠式で上演するオペラ・セリア「皇帝ティートの慈悲」(K.621)を魔笛完成前に仕上げ、公演の為にプラハに出発しようとしたある夜、見知らぬ男が彼を訪ねてやってきます。

その男は、匿名の依頼主からのレクイエム(鎮魂歌)の作曲をモーツァルトに依頼し、高額な報酬の一部を払って去ってゆきます。

プラハでの「皇帝ティートの慈悲」の初演の後、ウィーンに戻った彼は「魔笛」を仕上げ9月末の初演にこぎつけます。そして謎の依頼者のための「レクイエム」の作曲に着手しますが、プラハで崩した体調が悪化。ついにレクイエムは未完のまま、12月5日この世を去ります。

この曲の依頼者については、死の世界からの使者だったとかいう伝説が広く流布しますが、現在ではある田舎の領主が亡き夫人の為に依頼したことがわかっています。

そして遺作となり未完のままとなったこの曲、彼の死後貧困の真っ只中に取り残された妻コンスタンツェが、わすかでも収入を得ようと弟子のフランツ・クサーヴァー・ジュスマイヤーに完成を依頼。翌年には完成した「レクイエム」が依頼主に引き渡されます。

しかし結局コンスタンツェは亡き夫の作品として楽譜を出版。広く私たちの知るところとなります。

そういういきさつなので、はたして弟子のジュスマイヤーの筆によるこの曲をモーツァルト作曲としてよいものかという議論が後に起こり、この曲には大元の「ジュスマイアー版」以外にも、「バイアー版」「モーンダー版」「ランドン版」「レヴィン版」といった版が入り乱れ、その組み合わせまで存在します。

ちなみにかの合衆国第35代大統領ジョン・F・ケネディの追悼ミサ(カトリック)でこの曲が演奏されたそうです。

曲自体は7つの楽曲からなっています。

第1曲 入祭唱
第2曲 キリエ
第3曲 セクエンツィア
1.怒りの日
2.ラッパは驚くべき音を
3.恐るべき御稜威輝く王よ
4.思い出してください、悲しみ深いイエス様
5.呪われたものは退けられて
6.その日は涙に暮れる日
第4曲 奉献唱
1.朱イエス・キリスト
2.賛美の生贄と祈りを
第5曲 サンクトゥス〔聖なるかな〕
1.サンクトゥス〔聖なるかな〕
2.ベネディクトゥス〔祝福されますように〕
第6曲 アニュス・デイ〔神の子羊よ〕
第7曲 聖体拝領唱

ライブラリーは名演の誉れ高いカール・ベーム指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、1971年録音です。とにかく、興味のある方は聞いてみてください。もちろん旧約・新約聖書や果ては死海文書あたりまでの知識があるとなおよろしい。ジュスマイヤー版です。

モーツァルト:レクイエム

おすすめ平均:4.5
5モーツァルトレクイエムの決定盤
5人類への歌
4レクイエム史上に残る素晴らしい演奏です。
5ベーム2度目の録音・荘厳な演奏
5死の瞬間を感じた音楽

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