2010.02.04

CLASSICS

ジャゾットのアダージョ(1958年) (アルビノーニのト短調のアダージョ)

曲のタイトルが2つもついていることを不思議にお思いになった方は、なかなか思慮深い。コアなクラシックファンの方なら、その謎はご存知の通り。

一般的に「アルビノーニのアダージョ」と呼ばれる美しい旋律のアダージョ、実は18世紀の作曲家アルビノーニの作ではなく、20世紀の音楽評論家ジャゾネットの作と言われています。

1958年、音楽評論家として活動していたジャゾネットは、ザクセン国立図書館から受け取ったアルビノーニの自筆譜の断片を編曲したと称して、「ト短調のアダージョ」を出版します。

親しみやすさやいたわりの柔らかい旋律の中に、人間存在を暗示するかのような陰を帯びたこの曲は、クラシックの世界を超えて広く有名になります。が、実際に自筆譜なるものを呈示することの出来なかったジャゾネットは、編曲者ではなく完全なこの曲の作曲者として知られています。

何故彼が、自分で作っておきながら「アルビノーニの曲だ!」なんて言ったのかは、謎のままなのです。

ただただ優しく柔らかく私たちを包むだけでなく、私たちの心の奥底を知り尽くしてなお、それに触れまいとするような厳しさと陰を帯びた優しさ。暗いフィヨルドの断崖から、暗く灰色をした荒れる海と吹きつける海風に打たれるように、しかし心はいつのまにか透明に澄んでゆきます。

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