BOSS's Column

1970年代初頭のニューヨークを舞台に、実在した伝説の黒人ギャング、フランク・ルーカスの半生を描いたギャングもの。

ベトナム戦争も佳境を迎えた1969年のニューヨーク。ハーレムを仕切っていたギャングのボス"パンピー"ジョンソンが死去し、混沌とし始めた暗黒街で頭角を現し始めたのは、ボスの運転手であり付き人だったフランク・ルーカス(デンゼル・ワシントン)でした。

彼はそれまでのイタリア・マフィアの手下ではなく、自らのコネクションを使って東南アジアから麻薬を直接密輸し、「ブルー・マジック」と言う名で純度が倍、価格は半値というブツを兄弟を集めてさばき、ニューヨークのヘロイン市場を席捲します。

マフィアからも一目置かれるようになり、警察や政治家、芸能人やスポーツマンにまで表裏のコネクションを持つようになった彼でしたが、目立たないことを処世術としていました。

ニューヨークの隣町のニュージャージーでは、しがない刑事リッチー・ロバーツ（ラッセル・クロウ）が今夜も法律を学ぶため夜学に通っていました。根が真面目かと言えばそうでもなく、悪に手を染める友達を持ち無類の女好きで、別れた妻からは一人息子の親権を巡って調停中という問題児。

しかし真面目と正義は別次元。周りの刑事たちが雪崩を打ったように賄賂を取ったり、悪に手を染めてゆく中、捜査中に押収した10万ドルを正直に署に持ち込み、仲間たちからつまはじきとなります。しかしベトナム戦争がアメリカ国内に残したもうひとつの災忌である麻薬汚染を何とかしようと、当時の大統領ニクソンが各地に警察とは独立した麻薬取締局（DEA）が組織されることになり、単純な正義感を見込まれロバーツはニュージャージーの部署のTOPに抜擢されます。

そんな彼が町中に溢れる「ブルー・マジック」の捜査を開始、ついにフランク・ルーカスにたどり着きます。

実話モノですので、やはりリアリティが違います。公民権運動～ベトナム戦争終結～DEA設立、そしてアメリカ中を覆う戦争後遺症。あのころのきな臭い匂いがモワーと漂います。

そんな独特の時代の香りたつ中に、名優デンゼル・ワシントンが演じきる「ひとえに悪」だけではないリドリーと、あまりにも普通な男だけれどそれゆえ余計に稀有な男リッチーとの対比が描かれます。

監督は「エイリアン」「グラディエーター」「ハンニバル」そして「ブラックホーク・ダウン」のリドリー・スコット。地味な善人役というカラーのデンゼル・ワシントンの悪をえぐりだし、そしてまたグラディエーターとは正反対だけど、やはり「男らしさ」を感じさせるラッセル・クロウを描いています。

リドリー・スコットと言えば、「G.I.ジェーン」とか「プロヴァンスの贈り物」とか、失笑モノもありますが、本作は彼らしさの面目躍如という作品ではないでしょうか？これ以上の心理描写は、ちょっと彼には無理だと思うし・・・^_^;　それにしても、ラッセル・クロウ、太りすぎ？

えーっと、ギャングモノ好きの方に、デンゼル・ワシントンのファンの方に。いや、もう少し広くいろんな方にお勧めします。女性の方は観ても面白くないかな？2時間半あるし・・・。

出演：デンゼル・ワシントン,ラッセル・クロウ,キウェテル・イジョフォー,キューバ・グッディング・Jr,ジョシュ・ブローリン,テッド・レヴィン,アーマンド・アサンテ,ジョン・オーティス

監督：リドリー・スコット 2007年

BOSS的には・・・★★★☆☆

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