2010.02.13
FLAGS OF OUR FATHERS 邦題:父親たちの星条旗
太平洋戦争末期の激戦地である硫黄島を舞台に、日米双方の視点から描いた「硫黄島プロジェクト」のアメリカサイドの戦争ドラマ。監督・音楽はクリント・イーストウッド。決して観るまい、観ないぞ、観てなるものか・・・の気持ちも落ち着き、皆さんにご紹介です。
年老いた一人の老人が、その生涯を閉じようとしています。彼の名はジョン・ブラッドリー、愛称は「ドク」。1945年、海軍の衛生兵として硫黄島に配属され、そこで撮られた一枚の写真によって一躍国民の「英雄」となります。が、彼はその戦いのこと、そしてその写真のことを周りの誰にも語ろうとはしませんでした。彼の息子は、そんな父の生き様を探し始めます。
1945年2月16日。硫黄島に上陸したアメリカ軍の新兵たちは、予想だにしなかった日本軍の攻撃の前に、次々と仲間を失い苦戦を強いられます。しかし食糧も弾薬も十分ではない2万の日本軍に対し、アメリカ軍は11万。約一週間後の2月23日には、日本軍の橋頭堡ともいえる摺鉢山を占拠したアメリカ軍は山頂に星条旗を掲げます。
その様子を捉えた一枚の写真は、撮影の翌日には全米の新聞各紙のTOPで掲載され、長引く戦争の疲弊感が漂っていたアメリカ国民を鼓舞させることになります。そしてそれを軍事国債の発行につなげようと政治家たちが動き、写真に写った兵士たちは「英雄」として本土に戻され、「軍事国債キャンペーン」に引きずり回されることになります。
政治が先行し、はでなパフォーマンスで行われるパレードや祝賀会。しかし兵士たちは凄惨な硫黄島の戦場となくした多くの仲間のことが頭から離れることは無く、苦悩は日々募ってゆきます。
太平洋戦争において、「玉砕」と言う名の凄惨な最期を遂げた戦死者数のもっとも多い戦いがこの硫黄島でした。周囲22kmしかない小さな島でしたが、日本の本土爆撃を有利に進めるためにはどうしても攻略したい拠点でした。
この物語は、ジョー・ローゼンタールによって撮影された有名な写真「硫黄島の星条旗」を巡る被写体となった若者たちの戦場とそこを離れてからさらにます苦悩を、ドキュメントとして再現しています。
皆さんもどこかで一度は目にされたかもしれないこの写真は、史上もっとも有名な報道写真の一つで、1945年にピューリッツァー賞(写真部門)を受賞します。
凄惨な戦いではありましたが、その後のシーンとうまく織り交ぜることで、悲惨さだけを訴えるうまい作りです。イーストウッドも上達しました。相変わらず、彼らしい薄暗いスクリーンですが、逆に今回は硫黄島の真っ黒い砂がよく映されていました。撮影自体はアイルランドだったらしいですが・・・。
こういう映画、とくにドキュメントで作ってしまうと、なかなか作品にメッセージを込めることが難しいのですが、最後に生死の綱渡りをしていた20歳そこそこの若者たちの、子供のようにはしゃぐシーンを持ってくることで、ヒューマンタッチのエンディングとなっていますし、国のためでの無く、家族のためでもなく、ましてや相手を責めたり殺したりするためでもなく、ただそばにいる、運命的にそばにいることになった仲間を守る為に戦うと言う、まあアメリカ映画では常套句ではありますが、そういうところに落ち着いてゆきます。
日本軍の7.7mm 九九式軽機関銃がやたらと活躍していましたが、一般兵士のボルトアクションの三八式歩兵銃に対して米軍の半自動小銃のM1ガーランドの優位性が描かれていなかったのは、ちょっと意外でした。そうそう、M1でグレネードも飛ばしてましたねぇ~!
セットで観て評価すべきなのか?いやいやとりあえず今回は、これだけで勘弁してください。でも、これはノンフィクションです。「安っぽい戦争映画」とかいうやつは、出て来い!
出演:ライアン・フィリップ,ジェシー・ブラッドフォード,アダム・ビーチ,バリー・ペッパー,ジョン・スラッテリー,ポール・ウォーカー,ジェイミー・ベル
監督:クリント・イーストウッド 2006年
BOSS的には・・・★★★☆☆
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