2010.03.31
A Man for All Seasons 邦題:わが命つきるとも
オマー・シャリフ、ジュリー・クリスティ出演の名作「ドクトル・ジバゴ」の脚本を手がけたロバート・ボルトが自身の戯曲を脚色、「真昼の決闘」「地上より永遠に」のフレッド・ジンネマンが製作監督した、イギリス国教会創設の発端となった事件を巡る史劇。アカデミー賞作品賞受賞。
1501年、兄の急死により10歳でプリンス・オブ・ウェールズとなったヘンリーは、1509年に父の死によってヘンリー8世としてイングランド王に即位します。そして2ヵ月後には喪中であった兄の妻キャサリンと結婚式を挙げます。
19年後、世継ぎを生めないキャサリンに愛想を尽かし彼女と離婚して、彼より16歳若いアン・ブーリンと再婚しようとしていました。当時、英国はローマ・カトリックが国教であったため、離婚のためにはローマ法王の許可が必要でした。
王の再婚を法王に進言できるのは、ヨーロッパ中の人々から愛され厚い信頼を得ていた髙等評議員のトマス・モア(ポール・スコフィールド)ただ一人でした。ある夜、枢機卿ウォルジー(オーソン・ウエルズ)にハンプトン宮殿へと呼び出された彼は、王とキャサリンの離婚を承認するよう法王に取り計らってほしいと頼まれます。が、離婚を認めないローマ・カトリック、キリストとその信義に忠実に生きる高潔の人であるトマスはきっぱりと断ります。
1年後、王の離婚解決に失敗したウォルジーは死去。替わってトマスが大法官となります。ある日、川遊びの途中トマスの館を訪れた王は、彼にあらためて法王の離婚承認について申し入れをします。王に忠誠を誓うトマスはしかし、ローマ・カトリックの敬虔な信者であることから、王の意向には同意しませんでした。
間もなくカンタベリー大寺院で評議会が招集され、ヘンリー国王はローマ法王に対する忠誠を放棄し、自らイングランド国教会の長となってローマ・カトリックからの離脱を宣言します。それを受けて躊躇せず大法官の地位を捨て、一市民となって家族水入らずの生活を始めたトマス。
やがてキャサリンと離婚し、アンと結婚式を挙げた国王は、クロムウェル(レオ・マッカーン)を使ってトマスを幽閉します。
イギリスに国教会があり、ローマ・カトリックと流れが違うことは知っていましたが、その生い立ちが王の再婚問題だったとは、この映画を観るまで全く知りませんでした。歴史って結局、こういうことで大きな転換を迎えるんですよね。クレオパトラの鼻が高すぎたとか・・・^_^;
で、本作が伝えているのはトマスの、その命を賭してでも信義を通す生き様にあります。まあ考えれば、殉教者はすべてそうですし、たとえば戦争で散っていった多くの若者、あるいは批判はされますがアルカイダのような自爆テロの実行者も、信義に生き、信義に死ぬと言う意味では同じなのかもしれません。関係ない人を巻き添えにする是非は別にして。
「軽薄短小」なんていう言葉が流行ってからもう何十年になるのでしょうか?混沌と混迷の21世紀を迎えた迷走する私たちは、あらためて「志」に生きる「志士」に憧れたり、信義に生きる「騎士道」や「武士道」を取り出してみる。
賢い生き方ではないかもしれませんが、「小賢しい」生き方ではないことは確かです。流れに逆らってでも信義に生きるのか、流れに身を任せ賢く生きるのか。結果がどのくらい異なるのかの検証も出来ない人の人生。命の尽きる時に、胸を張って「自分はこう生きた」と言えるのは、はたしてどちらなのか?あなたはいかがでしょうか?
出演:ポール・スコフィールド,ウェンディ・ヒラー,レオ・マッカーン,ロバート・ショウ,オーソン・ウェルズ
製作・監督:フレッド・ジンネマン 1966年
原作戯曲:ロバート・ボルト
BOSS的には・・・★★★☆☆
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