2010.03.18

Movies

VOLVER 邦題:ボルベール 帰郷

母と娘の愛を通して、人が生きることの本質を問いかけるドラマ。2006年カンヌ国際映画祭・最優秀女優賞・最優秀脚本賞受賞、2006年アカデミー賞主演女優賞にノミネートされたスペイン映画です。

夫パコと14歳になる娘パウラ(ヨアンナ・コバ)との3人暮らしをしている美しく気丈な女性ライムンダ(ペネロペ・クルス)。姉のソーレ(ロラ・ドゥエニャス)と3人で故郷ラ・マンチャにある両親の墓参りに行った夜、夫から会社を首になったと告げられます。

次の日、空港での雑役を追え帰宅したライムンダを待ち受けていたのは、ずぶ濡れで母の帰りを待つ娘。帰宅してみると夫は台所の床で腹を刺されて死んでいました。パウラが本当の娘でないことを言い訳に、乱暴しようとして逆に彼女に刺されたのでした。

ライムンダは娘を守るため、夫は自分が殺したんだと娘に言い聞かせ、死体を空き家となった隣のレストランの冷蔵庫に隠します。

折りしもその夜、ライムンダの両親が山小屋の火事で死んだことのショックから病気がちだった彼女の育ての親の叔母がなくなったとの知らせが入ってきます。

volver.jpg姉と叔母の隣人のアグスティナ(ブランカ・ポルティージョ)に叔母の葬儀を任せ、レストランで夫の死体をどうするか悩んでいた彼女は、近くで映画撮影をしていたクルーの一人から店員と間違われ、彼らに食事を出すことになります。

一方、叔母の葬儀の為に故郷に帰ったソーレは、近所の人たちの奇妙な噂話を耳にします。彼女たちの母の幽霊が村を彷徨っていると言うのです。恐がりのソーレは葬儀を済ませ、そそくさと車で帰宅しましたが、車を離れようとするとトランクから母の呼ぶ声がする・・・。

タイトルから戦争に行って永く帰ってこなかった兵士の物語かと想像してましたが、全然違ってました。途中、レストランで主人公が歌うタンゴのタイトル。物語ではこの世に戻ってくる母と、母のもとに帰る娘たちの両方を指しているのか?

本作では、男どもはまったく消耗品扱いです。いや、犯罪者といいますか、少なくとも女性たちの受け継ぐ世の中には必要でないような扱いです。全部お話しするとネタバレになってしまいますので・・・。

本作の監督ペドロ・アルモドバル、最初は女性監督かなと思ったのですが、男性で同性愛者だそうです。少年時代には性的虐待を受けていたそう。それが作品に影響していることは確かですが、それは決してネガティブな話ではなく、なかなか切れ味の鋭い展開や鮮やかな画面の色彩感覚は、私の嫌いなタイプの女性監督とか異なる新鮮な感覚です。

ペネロペ・クルス、美しいですねぇ~。例の「帰郷」を歌うシーンは口パクばればれでしたが。それと細かい話ですが左目の下が気になって気になって・・・^_^;

母は強し。そして全女性はそうなる宿命を背負っている。それとくらべると男とはなんと情けない生き物なのか・・・。でも女性だけでも男性だけでも、私たち人類の種は滅んでしまいます。

お互いがその違いを理解し合い認め合いながら生きてゆくこと。目の前の誰かさんを、もう一度尊敬と謙譲の気持ちで見つめなおしてみましょう。東風にご注意!

出演:ペネロペ・クルス,カルメン・マウラ,ロラ・ドゥエニャス,ブランカ・ポルティージョ,ヨアンナ・コバ

監督:ペドロ・アルモドバル 2006年

BOSS的には・・・★★★☆☆

ボルベール<帰郷> コレクターズ・エディション [DVD]

おすすめ平均:4.5
5作品を重ねる毎に円熟味を増すアルモドバル監督に脱帽
4押し込むチカラ
5アルモドバールの見る現代スペイン
5母の逞しさ、そして愛
4見どころの多い映画でした

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