2010.04.15
ZWARTBOEK/BLACK BOOK 邦題:ブラックブック
第2次世界大戦末期のオランダを舞台に、レジスタンスに身を投じた若きユダヤ人女性の波乱に満ちた半生を描いたサスペンス作品。監督は、「ロボコップ」「トータル・リコール」「氷の微笑」「インビジブル」などのヒット作を生み出したポール・ヴァーホーヴェンが、母国オランダに戻ってのメガホン。
1944年9月、ドイツ占領下のオランダ。かつて歌手だった若いユダヤ人女性ラヘル(カリス・ファン・ハウテン)は、ナチスのユダヤ人狩りを逃れて田舎のオランダ人一家の元に身を寄せていました。
ある日、ラヘルが湖に出かけている間に、戦闘機の攻撃を受けた爆撃機が投げ落とした爆弾が一家の住む家を直撃し、一人になった彼女はオランダ人青年ロブ(ミヒル・ホイスマン)の隠れ家に逃れます。その夜、一人の男がロブの隠れ家を訪ねてきます。
訪ねてきたのはオランダ警察のファン・ハイン(ピーター・ブロック)。彼は連合軍によって解放されているオランダ南部への脱出を手引きすると約束します。ロブと無事ドイツ軍の検問所を通過したラヘルは両親や弟とも再会。闇夜にまぎれて船に乗り込んだ彼らでしたが、突然現れたドイツ軍の船に銃撃を受けます。
なすすべもなく次々と銃弾に倒れるユダヤの人たち。両親も弟もロブも銃弾に倒れ、湖に飛び込んだラヘルはただ一人生き残ることになります。
アウシュヴィッツで有名なナチス・ドイツのユダヤ人迫害とホロコースト。そしてユダヤ人の迫害は20世紀だけではなく、はるか紀元前からであることは、旧約聖書、あるいは映画「十戎」をご覧になった方はご存知の通り。
本作は、そんなユダヤ人の個人的復讐とナチス占領下のオランダのレジスタンスの戦い、それにナチスの傀儡となったスパイたちが複雑に絡み合います。そして無益な流血を避けようとするドイツ将校と私利私欲のためには殺人など意に介さない冷血軍人がそれに加わり、謎が謎を呼び、主人公たちも私たちも疑心暗鬼のまま死と隣り合わせに置かれます。
2000年以上も差別と武力に虐げられた民族であるユダヤの民。私たち日本人には恐らく身に沁みて理解できないものが、歴史の浅いナチスによる迫害だけでなく、現代に生きるかの地の人たちには存在するのでしょう。
さすがはヴァーホーヴェン監督と納得させられるヴァイオレンスとセクシャルな映像、ちょっとしたコミカルな会話もあり、見るものを飽きさせません。彼の代表作ほどに現実離れした過激さもほどよくリアルに戻されていますし。
なかなか複雑な展開ですが、うまく組み立てられていると思います。主役のカリス・ファン・ハウテンはなかなかの熱演。最初は表情が下手だと思いましたが、実はそれが帰ってリアルさを訴えます。惜しみなくさらけ出される豊かな胸も、セクシーというよりは美しいですし・・・。
エンディングでは、平和に暮らす彼女の回りに兵士たちが展開してきます。第2次大戦が終わって10年。彼女の故郷イスラエルは、第2次中東戦争の真っ只中だったのです。彼らの試練はまだまだ続いているのです。オランダ・ドイツ・イギリス・ベルギー合作。
出演:カリス・ファン・ハウテン,ゼバスチャン・コッホ,トム・ホフマン,ハリナ・ライン,ワルデマー・コブス
監督:ポール・ヴァーホーヴェン 2006年
BOSS的には・・・★★★☆☆
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