2010.05.18
ANASTASIA 邦題:追想
ロシア革命による処刑を免れたという「アナスタシア伝説」を描いた歴史ドラマ。マルセル・モーレットによる戯曲の映画化で、主演はイングリッド・バーグマンにユル・ブリンナー。アカデミー賞主演女優賞受賞作品。
1917年に起こったロシア革命。16世紀から近代化を進め、ロシアをヨーロッパの列強のひとつにしたロマノフ王朝は、この革命により廃位となります。
1918年7月。監禁中の第18代ロシア皇帝ニコライ2世とその家族は、レーニンの命令により銃殺処刑されますが、末娘のアナスタシアはその難を逃れ生き延びたという「アナスタシア伝説」なるものが人々の間で囁かれるようになります。
それは途絶えたロマノフ王朝の遺産の後継を意味し、また革命よって祖国を追われた一族の悲願でもありました。
10年後のフランスの首都パリ。ニコライ2世の元侍従武官セルゲイ・ボーニン(ユル・ブリンナー)と元銀行家ボリス・チェロノフ(アキム・タミロフ)、元神学生ピョートル・ペトロヴィン(サッシャ・ピトエフ)らは、そんな王家の生き残りを探し出す、いや偽物を仕立て上げて、遺産相続のおこぼれに預かろうと画策していました。
そしてボーニンが見つけてきたのは教会のミサに現れた記憶を失ったみすぼらしい女性アンナ・コレフ(イングリッド・バーグマン)でした。
顔立ちや傷の跡、時折見せる立ち振る舞いは皇女アナスタシアと思わせるものもありましたが、ボーニンらにとっては真偽はどうでもよいこと。とにかく彼女がアナスタシアだと証明されればそれでよかったのです。
翌日からアンナに「アナスタシア」としての教育を始めるボーニン。その甲斐あって、ニコライ2世の元側近や元使用人たちに彼女が本物であると信じさせることに成功します。
「アンナはアナスタシアでは?」という話題づくりに成功したボーニンらは、遺産相続の承認を得るため、アナスタシアの祖母にあたるデンマークのマリア・フョードロヴナ皇太后(ヘレン・ヘイズ)にアンナを会わせようとします。
「アナスタシア伝説」については、時々テレビなどでもやってます。ニコライ2世は、日露戦争や日本海海戦でも有名ですよね!
そしてアナスタシアを名乗る話はずいぶんとあった様で、最も有名なものが1920年にあったこの物語のベースとなった「アンナ・アンダーソン」事件でした。それはロシア政府が20世紀の終わりになるまで、一家全員の銃殺を隠匿したことも一因でした。
物語自体は、アンナが本物かどうかを問いただすことなく、過去の記憶が定かではない彼女が、一人の女性としての幸せというものをどうやって探し出すのかを、大言壮語なプロットの裏で展開しています。
そしてその難しい役をこなしたのが41歳のイングリッド・バーグマン。みすぼらしい浮浪女が次第に皇女としての身のこなしを身につけてゆく姿を演じきり、かつ奥底で揺れる女心を見事に表現しています。
特にエンディングでの皇太后役の名優へレン・レイズとのやり取りは感動します。
ユル・ブリンナーも元軍人で今は詐欺師というなかなな難しい役をそつなくこなしていますが、名演というほどではありません。ただ、ちょっとぶっきらぼうなその演技がボーニンの心もようをそれとなく伝えることには成功していますね!
イングリッド・バーグマンはグレース・ケリーとともに、2大ハリウッド・クールビューティと呼ばれる、私好みの(笑)女優さんですが、「カサブランカ」でのあの若々しさはありません。
映画監督ロッセリーニを追ってイタリアに渡ったことにより、グレース・ケリーとは違う人生を歩むことになったイングリッド、娘のイザベラ・ロッセリーニもやはり美人です。邦題タイトルには大不満!
最後に彼女の名言を。
「私の後悔することは、やらなかったことであり、できなかったことではない」
出演:ユル・ブリンナー,イングリッド・バーグマン,ヘレン・ヘイズ,エイキム・タミロフ,マーティタ・ハント,フェリックス・アイルマー,イヴァン・デニ
監督:アナトール・リトヴァク 1956年
BOSS的には・・・★★★☆☆
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