2010.05.13
Sarvador 邦題:サルバドル 遥かなる日々
実在の写真記者の実体験を通して、内戦というものの本質を描いた戦争物社会派作品。主演は「トゥルー・クライム」のジェームズ・ウッズ。オリバー・ストーン監督の入魂の一作です。
フォト・ジャーナリストのリチャード・ボイル(ジェームズ・ウッズ)は、サンフランシスコのアパートを追い出され、スピード違反と免許証不所持で留置所に入れられます。友人のDr.ロック(ジェームズ・ベルーシ)に保釈金を用意させますが、売春と酒で釣られた彼は、ロックと共に内戦中のエル・サルバドルに向かいます。
いきなり二人は殺されそうになり、ボイルがフィゲロア大佐(ジョルグ・ルーク)を知っていると語りその場を逃ようとしますが、結果会った事もない大佐のところに連れて行かれます。フィゲロア大佐とは、少しでも左翼ゲリラのシンパであるとの疑いを持った者は容赦なく殺害する残虐な人物でした。
形だけの政府議会。マクシミリアン・カサノヴァこと、マックス少佐(トニー・プラナ)が指揮する「死の部隊」があたり前に殺戮を繰り返し、左翼ゲリラFMLN(ファブランド・マルチ民族解放戦線)と激しい内戦状態にあったサン・サルバドルの実情を、彼らは身を持って理解することになります。
かつての恋人マリア(エルペディア・カリロ)と偶然再会したボイルは、海岸の家で一緒に暮らし始めますが、首都サン・サルバドルで出会ったフォト・ジャーナリストのジョン・キャサディ(ジョン・サヴェージ)から、忘れていた戦場記者としての「生と死の感慨」がよみがえり、ゲリラへの取材の準備を始めます。
「今、ベトナムで共産主義の侵略を防がなければ、次はフロリダで防ぐことになる」有名な「ドミノ理論」です。さまざまな理由で東南アジア(ベトナム)への介入から撤退せざるを得なかったアメリカは、もっと身近の足元で行なわれている内戦にも、「単純な論理展開と大国の正義」によって介入します。たとえ「死の部隊」がM16で殺戮を繰り返していたとしても。
「死の部隊」は、対立する左翼政治家や労働組合員だけでなく、学者、医者、弁護士、学生、農民、神父、尼僧、ジャーナリストなど、見せしめを含め多くの一般市民を夜毎殺戮し続けました。もちろん女性や幼い子供たちも。
作品の中では、政敵とみなされたカトリック教会も襲撃され神父も例外なく殺害されます。そして左翼系の家族をかくまっているという嫌疑で、老婆を含むシスターたちは犯され殺されます。
そこで私達は大国の行なっている愚かさを呪い、自らの正義を問い、そしていつしか左翼ゲリラの側に立っている自分を見ます。しかし反攻に出たゲリラ軍の行為行動の光景は、それまでいやというほど目にしてきた残虐な政府軍と何ひとつ変わらないという事実を突きつけられ、一瞬にして私達は言葉を失ってしまいます。
「イノセント・ヴォイス」は家族向け内戦解説作品。本作は「男性専用」とさせていただきます。(女性に、男の愚かさを見せたくありませんので・・・)
感動というにはあまりに衝撃を受けた本作。「感動」という言葉を広義にとると、「二度とは見たくない感動した作品」のひとつ。グレードアップが目的(?)の邦題「遥かなる日々」は、まったく不要です!
ちなみに、ボイル愛用のカメラはCANONです!
出演:ジェームズ・ウッズ,ジェームズ・ベルーシ,マイケル・マーフィー,ジョン・サヴェージ,エルピディア・キャリロ,トニー・プラナ,コルビー・チェスター
監督:オリヴァー・ストーン 1986年
BOSS的には・・・★★★★☆
おすすめ平均:
ジェームズウッズを存分に味わうなら
「プラトゥーン」の影に隠れたオリバー・ストーンの秀作映画
心に重い結末
隠れた秀作!リアリティが凄い。見ごたえあり。
「プラトーン」以前。
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