BOSS's COLUMN

2010.06.25

Cinderella Man　邦題：シンデレラマン

大恐慌時代のアメリカで、絶望的な貧困を乗り越え愛する家族の為に戦いを続けた伝説のプロ・ボクサー、ジェームス・J・ブラドックの半生を描いたヒューマンドラマ。アカデミー賞監督賞受賞作品。

プロ・ボクサー、ジェームス・J・ブラドック（ラッセル・クロウ）はいずれはチャンピオンと前途を有望視されていましたが、大恐慌に突入したアメリカでは興業での収益は減り、右手の故障がきっかけでライセンスを剥奪されます。

妻メイ（レネー・ゼルウィガー）と３人の幼い子供のため、ブラドックは日雇いの港湾労働の職を求めて朝、労働者の列に並びますが、毎日仕事にありつけることもなく、食べるにも困るようになります。そしてとうとう電気も止められ、メイは彼に無断で暖房の無いアパートから子供たちを伯父の家に預けてしまいます。

長男に「どこかにやるようなことはしない」と約束していた彼はショックを受け、生活保護を受ける人々の列に並びますが、溜まった電気代には全く足りない。そこで彼は、恥を忍んで追放された協会のドアを叩き、マネージャーたちに施しを願い出ます。

ある日、かつてのマネージャーだったジョー・グルード(ポール・ジアマッティ) が、世界ランク２位の若手ボクサーとの試合話を持ちかけてきます。それは誰が見ても勝ち目のない試合だし、ライセンスを元に戻すということではなく、一夜限りのリング。しかし日々の暮らしに困っていたブラドックにとっては、とにかく愛する家族と生き延びるためには、わずかな報酬でも必要でした。

仕事とはいえ、殴られ倒される夫の姿など見たくないという妻の反対を押し切って試合に臨んだブラドック。しかし右手をかばって続けた肉体労働の甲斐あって強くなった左パンチにより、まさかの勝利を収めます。

一夜にして、街に溢れる貧困層のヒーローとなったブラドックは、ついにヘビー級タイトルマッチに出場することになります。しかしチャンプのマックス・ベア(クレイグ・ビアーコ)はこれまで２人、試合で相手を殺した猛獣のようなボクサー。

少しばかりのお金よりもブラドックとともに暮らすことを望むメイは、彼に試合をやめるよう訴えますが、彼の戦いはもはや個人やその家族の問題だけではなく、彼は貧しく暮らす人々の希望であり英雄となっていたのでした。

久しぶりにカンドーしてうるうるしてしまいました。恐慌下では、多くの人々が職をなくし金も無く、一家離散や路頭に迷う人々で街が溢れていました。一人のボクサーにとってももちろん状況に変わりはないわけで、そういう状況の中でも生きる為に戦い続けた人は沢山いたし、別にブラドックだけが偉いわけではありません。

しかし、沢山のそういう厳しい生活に身をやつす人々の希望の星としての運命を背負った彼の、命をも惜しまないボクシングという仕事への執念、ボクサーとして命を賭けることの感動を、ラッセル・クロウの地味な演技がかえってひしひしと伝えてきます。

妻メイ役のレニー・ゼルウィガー、個人的には辛気臭くてあまり好きではないのですが、ともすれば惨めさだけが強調されるようなシチュエーションの中、「愛と希望」を無くすことなく夫に注ぎ続ける役をうまく演じています。

監督は「コクーン」「バックドラフト」「アポロ13」のロン・ハワード。戦う熱いリング上のファイターと、貧しい住処で子供たちに静かに愛を注ぐ主人公を見事に撮り切っています。

出演：ラッセル・クロウ,レニー・ゼルウィガー,ポール・ジアマッティ,クレイグ・ビアーゴ,パディ・コンシダイン,ブルース・マクギル,コナー・プライス

監督：ロン・ハワード　2005年

BOSS的には・・・★★★★☆