2010.06.09
HANA-BI
同僚刑事の死や不治の病に犯された妻を前にして、孤独の中に何かを見つけようとする刑事の物語。ビートたけし(北野武)が監督主演してヴェネツィア国際映画祭金獅子賞を受賞。
凶悪犯の張り込み中の刑事西(ビートたけし)は、同僚の堀部(大杉漣)の好意で、数ヶ月前に幼い子供を亡くし失意のまま体調を崩して入院している妻美幸を病院に見舞います。
そこで医者から、妻がもう助からない不治の病であることを告げられます。同じ頃、張り込みをしていた堀部が犯人の凶弾に倒れたと聞かされます。
犯人を別の場所で見つけた彼ら。しかし西の失態から後輩の田中(芦川誠)が命を落とすことになります。
罪悪感から刑事を辞し、職探しをする西。死んだ田中の妻や余命いくばくもない妻との生活費を工面しようとヤクザからの借金を重ねるようになります。やがて返済に困るようになった彼は、銀行強盗を計画。首尾よく強奪に成功した西は、妻を伴って旅に出ます。
話題になりましたがなかなか見る機会のなかった本作。一言で言ってしまえば私的には「駄作」でした。個人的に岸本加世子が嫌いだというような理由ではなく・・・。
1.まず物語自体が2流のテレビ・サスペンス並みであること。
2.主人公の西のキャラという設定とはいえ、演技らしい演技を主人公をはじめ誰もしていない。
3.行き過ぎた暴力シーンを中和させようとするかのようなビートたけしの稚拙な絵を、しつこく見せられる。
4.ヨーロッパ映画によくある、思った以上に一呼吸長いカットまでのシーンには何の意味も込められていない。
5.久石譲の音楽は70年初頭のフランス映画を思い起こさせはしますが、彷彿はさせず、ただ新しいようで古い。
などなど。
コメディアンとしてのビートたけしは、私にしては珍しいその存在意義を認める芸人なのですが、どうも監督としては稚拙すぎるような気がします。
これをヨーロッパの人たちが絶賛したということが理解できないのですが、それはもしかすると私の作品を見る視点がかなりかたよっているからかもしれません。
しかし、ヨーロッパから見た東洋の奇妙な民族国家として、もしかしたらこういう解釈を我々はされているのかもしれないと思うと、そのほうが恐いような気がします。
まあ、クロサワ以外には、世界に通用する映画監督はいまだ存在しないということなのでしょうか?莫大な資金を投じて感動や驚きを講ずるハリウッドや変わらぬ、しかし独特の価値観を持ったヨーロッパの作品たち。それらと肩を並べるには、やはりわたしたち日本人のアイデンティティをもう一度確立する必要がある。いや、はたしてそういうものが存在するのか・・・。
そういう恐さを実感させてくれると言う意味では、貴重な作品でした。
そういう意味で見たい方にだけ、お勧めします。★ひとつに限りなく近い★2つ。
出演:ビートたけし,岸本加世子,大杉漣,寺島進,白竜,渡辺哲,薬師寺保栄,大家由祐子,芦川誠
監督:北野武 1998年
音楽:久石譲
BOSS的には・・・★★☆☆
もっとムービー・アーカイブスはこちら >>> 「ムービー・インデックス」