2010.06.26
LE CONCERT 邦題:オーケストラ!
政治的な問題で解雇されたソビエトの指揮者と楽団員たちが、本物になりすましてパリで公演を行うべく奮闘するヒューマン・コメディ。チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲がフューチャーされたフランス映画です。
かつてボリショイ劇場の楽団の指揮者であり世界的にも有名なアンドレイ(アレクセイ・グシュコフ)は、その職を終われ今は劇場の清掃員をしています。30年前にユダヤ人の女性ヴァイオリニストによるチャイコフスキーの協奏曲を演奏しようとしてKGBに逮捕されたのです。楽団員たちも解雇され、今は2流の楽団に成り下がっていました。
ある日清掃中に、パリのシャトレ劇場からの演奏オファーのFAXを盗み見。それを手にした彼は、親友でチェロ奏者だったサーシャ(ドミトリー・グロスマン)に、偽の楽団でパリに乗り込む話を持ちかけます。二人は、かつて彼を逮捕した元KGBイワン(ヴァレリー・バリノフ)をマネージャーにし、散りじりになったかつての楽団員を集めはじめます。
アメリカから40年遅れてやってきた旧ソ連でのユダヤ人排斥運動。その犠牲となって音楽界を追われた音楽家たちが、本物の楽団になりすましパリに乗り込む。一歩間違えればとってもシリアスな展開となりそうなこのプロットを、自らユダヤ人でもあるラデュ・ミヘイレアニュ監督が笑いと謎解きを交えてさらっと見せてくれます。
こういうデリケートな問題を扱いつつも、劇中では「守銭奴ユダヤ人」を笑い飛ばすし、ヒロインのメラニー・ロラン演ずるマリーの出生の秘密については、わざととしか思えないミスリードで我々を混乱させ、彼自身は銀幕の後ろで笑ってる?
メラニー・ロラン、ん・・・私好みです。かなりの貧乳ですが、今のところ問題ありません。^_^;
こういう本格的な音楽演奏作品では、登場人物たちの演奏演技下手で、一瞬にして興ざめしてしまい、感動どころではなくなることも多いのですが、彼女の独奏シーンもオケの演奏シーンも全く違和感を感じませんでした。
ラストではもうボロボロと涙が・・・。スクリーンから「たまねぎ光線」でも出てたのか・・・。
全体としては、あれこれ欲張りすぎでその意味がしっかりと伝わらなかったのでは?と思うような部分とか、不要と思われるシーンなどもあり、いい意味の「フランス映画」らしからぬ粗雑さを感じますが、それが返ってエンディングの、あの皆の30年の思いを劇場の天井からその上の天上へと解き放つ伏線となっているような気もします。
ちょっと感動したい映画を観たい方に。チャイコフスキーのヴェイオリン協奏曲に触れてみたい方に。メラニー・ロラン系の女優が好みの方に。現在劇場公開中です。
出演:アレクセイ・グシュコフ,メラニー・ロラン,フランソワ・ベルレアン,ミュウ=ミュウ,ドミトリー・ナザロフ,ヴァレリー・バリノフ,アンナ・カメンコヴァ
監督:ラデュ・ミヘイレアニュ 2009年
BOSS的には・・・★★★☆☆