2010.07.07
A Streetcar Named Desire 邦題:欲望という名の電車
不幸な出来事で夫に先立たれ、妹夫婦のもとに身を寄せた一人の女性の悲しき顛末を描いたドラマ。ピュリッツア賞を受賞した同名の舞台劇の映画化。主演はヴィヴィアン・リーに若きマーロン・ブランド。アカデミー賞主演女優賞・助演男優賞・助演女優賞受賞作品。
アメリカ南部の港湾都市ニューオーリンズのうらぶれたフランス人街に、「欲望」という名の電車に乗って一人の女性がやってきます。彼女の名はブランチ・デュボワ(ビビアン・リー)。
南部の田舎町オリオールの名門に生まれ育った彼女。しかし莫大な借金を抱えた両親に先立たれ無一文となって、かつて家を飛び出した妹夫婦を頼ってこの町にやってきたのでした。
妹ステラ(キム・ハンター)の夫スタンレー(マーロン・ブランド)は貧しい工員で、その家はたった二間の狭いアパートでした。居候なのにお嬢様気取りのブランチの言動が気に入らないスタンレーは、普段以上に粗野に振舞います。
妹に一緒に家を出るように促すブランチ。しかしスタンレーの子供を身ごもったステラは、自分を強く愛してくれている彼のもとを離れることはできません。
そしてブランチは、スタンレーの軍隊時代からの友人でカード仲間のミッチ(カール・マルデン)に関心を持ち、独身でまじめな彼もまたブランチとの結婚を真剣に考えるようになるのですが・・・。
先日とある宴席で、「本能と理性」に関する二極論の話を耳にしました。私的には「本能」と「理性」は二律背反ではなくそれぞれが独自に存在し、時に反発しあい時に相乗し合うものではないかと思うのですが、その話はさておき、この物語の中では男女間の「欲望」は「理性」で乗り越えるものという命題が提示され、またそれを欲望あるいは本能が翻弄するという展開となっています。
道徳教育の徹底したわが国の戦後教育を受けたものとしては、「欲望」と言うとどうも否定的に捉えてしまう。「Desire」という言葉は、「欲望」というよりも「渇望」というような日本語のほうが適切だと思うのですが・・・
「風とともに去りぬ」で美しくも強きスカーレットを演じたビビアン・リー。38歳にしてはちょっと疲れた表情なのは、役柄だけではなく、役者として当時夫であり名優であるローレンス・オリヴィエを超えようとする葛藤の疲れなのか?しかしその名演はアカデミーで評価されます。
映画2作目のマーロン・ブランド。生涯ずっと変わらない性格俳優としてのスタイルはすでに確立されており、役柄は粗野な若者ですが男くささは一品。劇中の下着姿が当時「Tシャツ」ブームとなったことは、知る人ぞ知るお話です。
監督はエリア・カザン。先日の「紳士協定」から4年後の作品です。彼はこの3年後、マーロンと組んだ「波止場」とジェームス・ディーンの「エデンの東」を発表します。
もっともまともな役のカール・マルデン演じるミッチが、私たちの代弁者でしょうか?若いです。
自分たちの日常とはまったく関係のない貧しく荒れた暮らしの中の、欲望と夢、理性と正気。あながち無縁とも思えないと、見終わった後でズンとくる、そんな作品です。
出演:ヴィヴィアン・リー,マーロン・ブランド,キム・ハンター,カール・マルデン,ルディ・ボンド,ニック・デニス
監督:エリア・カザン 1951年
原作戯曲:テネシー・ウィリアムズ
BOSS的には・・・★★★☆☆
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