2010.07.03
Gentleman's Agreement 邦題:紳士協定
1940年代アメリカに蔓延していた反ユダヤ主義に対し、執筆とその取材でその差別的思想に果敢に挑戦したジャーナリストを描いた社会派ドラマ。主演は「ローマの休日」のグレゴリー・ペック。監督は後に「欲望という名の電車」「波止場」「エデンの東」で名を馳せたエリア・カザン。アカデミー賞作品賞・監督賞・助演女優賞受賞。
7年前に妻に先立たれ、一人息子のトミー(ディーン・ストックウェル)と年老いた母(アン・リヴェール)の3人暮らしのフィリップ(グレゴリー・ペック)は、社会派週刊誌の編集長ミニフィ(アルバート・デカー)の招きで西海岸からニューヨークに引っ越してきます。
早速、フィルは「反ユダヤ主義」をテーマにした連載執筆を依頼されます。フィルはこの記事の発案者であるミニフィの姪キャシー(ドロシー・マグワイア)に一目ぼれ。離婚していた彼女も、フィルに惹かれてゆきます。
一方、記事のほうはデリケートな問題だけに厄介でした。単なる取材だけでは生きた記事を書くことが出来ないと判断したフィルは、回りを騙して自らユダヤ人になりきり、差別渦巻く人々の間に自らを置くことを決心します。
効果はてきめん。彼がユダヤ人だと知った周りの人々は、手のひらを返したようによそよそしく接するようになります。一方、キャシーとの関係は進み、社の同僚のアン(セレステ・ホルム)のパーティに出席した二人は婚約をすることに。しかし単なる仕事を超えて差別問題に激しい憤りを覚えるフィルと、問題をやり過ごそうとするキャシーの間には次第に溝が生まれてゆきます。
アメリカの人種差別問題といえば黒人差別問題。第2次世界大戦終戦直後の1940年代は、それはまだ問題ともなっておらず、それよりもむしろ白人社会の中に早くから進出していたユダヤ人に対する排他感情が問題視されていました。
この時代からすでにハリウッドの映画人にはかなりの数のユダヤ人がいました。しかしこの問題を取り上げることは長い間、タブーとされてきたのです。そしてこの作品は、画期的な勇気ある社会劇として評価されました。
単なる差別の実態を描くだけでなく、何もしない「善意の差別」や差別される側の差別意識の問題などを、さまざまな立場や愛情、友情を通して描いた力作です。
そしてそういう社会問題だけでなく、人と人との関係、特に伴侶となる二人にとってお互いの価値観が同じであることの大切さを友人デイヴがキャシーに語るシーンは必見。身に沁みます。
アメリカ自体はこの作品の20年以上後に、再び黒人の人種差別問題と対峙することになります。
出演:グレゴリー・ペック,ドロシー・マクガイア,ジョン・ガーフィールド,セレステ・ホルム,アン・リヴェア
監督:エリア・カザン 1947年
原作:ローラ・Z・ホブスン
BOSS的には・・・★★★☆☆
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