2010.07.05
Tom Horn 邦題:トムホーン
19世紀のアメリカを舞台に、法治国家となってゆくアメリカ社会に生きた実在のガンマンの半生を描いたドラマ。
19世紀初頭のアメリカ西部。開拓時代も終わりに近づいてはいましたが、農場主たちは銃の力を借りる無法者の牛泥棒に悩まされていました。
ワイオミング州の小さな町ハガービルに愛馬でやってきたのは、西郡のあちこちで悪党を倒してきたライフルの名手トム・ホーン(スティーヴ・マックィーン)でした。牧場主ジョン・コーブル(リチャード・ファーンズワースワース)に出合ったトムは、彼から地元の大牧場主たちを紹介されます。彼らは地元にはびこる牛泥棒たちの一掃のためにトムを雇いたいと申し入れてきます。
牧童の一人として働きながら、次々と牛泥棒たちを退治してゆくトムは、たちまち小さな町で評判となります。が、牧場仕事と関係ない人たちの目には、トムはただの冷血な殺し屋としか映っていませんでした。
一方、トムは地元の学校で教師をするグレンドレーネ・キンメル(リンダ・エヴァンス)と知り合い親しくなりますが、悪党と言えども銃で殺害し、その恨みから常に命を狙われているトムに対し、自らの目指すものとは違うものを感じて彼の元を去ります。
泥棒退治も佳境を過ぎると、牧場主の中には次第に暴力一辺倒のトムの行動を非難する者も現れ始め、トムは孤立してゆきます。そしてある日、15歳になる牧場主の息子が何者かに射殺され、犯人はトムではないかという噂が広がります。
開拓時代の西部というのは無法地帯。18世紀末の独立戦争後、合衆国憲法が施行されはしたものの、それぞれの州や小さな町がその元に守られるようになるまでには1世紀と言う長い時間が必要でした。しかし確実に訪れた法治国家への道は、ある時は長い時間をかけて、ある時は急激に訪れます。
ここで描かれる主人公トム・ホーンは、その急激な変化の中で利用され翻弄された人間の一人。それはある意味、時代の渦に巻き込まれた一人の人間の悲劇かもしれません。か、その悲劇を生んだのは、実は人間そのものであることを教えてくれます。
本作の撮影中に不治の病を宣告されたマックイーン。じっくりと、入魂の演技。彼はきっとトム・ホーンの生き様に、己の映画人としての生き様とその終焉を見据えていたことでしょう。この後、ハリウッドは娯楽と興業的な成功の道のみを追い求めるようになります。
出演:スティーヴ・マックイーン,リンダ・エヴァンス,リチャード・ファーンズワース,ビリー・グリーン・ブッシュ,スリム・ピケンズ
監督:ウィリアム・ウィヤード 1979年
BOSS的には・・・★★★☆☆
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