2010.08.29
ショパン 子守唄 変ニ長調 作品57(1844年)
今日は、1曲だけショパンの残した子守唄、作品57です。もともとは「変奏曲」として書かれましたが、試演の際に改訂され「子守唄」となったそうです。
5分足らずのこの曲は、4小節の静かな基本旋律を15回ほどわずかに変奏しますが、この間左手の奏でる低音部は同じ和声の伴奏形が延々と繰り返されます。
それは主旋律以上に静かで穏やかであり、揺りかごが規則正しく揺り動かされているようでもあり、また赤子の小さな心臓の鼓動のようであります。
一方の主旋律和声は、4小節ごとに変奏され、そしてそれは多分にピアニスティックでありながら、まるで美しい織物の柄を見るようにつづられます。
最後は消え入るように終わりを迎えますが、聞いている私たちはその音を聞く前に、すでに心の奥底から癒され、穏やかに眠りの霞に包まれ、その音を確かめる前に静かに眠りについてしまいそうです。ショパンがすぐれた変奏技法の作曲者であることを十二分に知らしめる、後期の名品です。