2010.08.02
Fiddler on the Roof 邦題:屋根の上のバイオリン弾き
ショーレム・アレイヘムの短篇小説「牛乳屋テヴィエ」を原作とし、ブロードウェイでロングラン記録を樹立したミュージカルの映画化。タイトルだけはご存知の方も多いはず。日本では故森繁久彌さんが舞台をやってましたね!アカデミー賞撮影賞・音響賞・歌曲編曲賞受賞。
20世紀初頭、ロシア革命間近のウクライナ地方の小さな町アナテフカ。牛乳を売り歩くテビエ(トポル)は貧しいけれど信仰深く、口やかましい妻ゴールデ(ノーマ・クレイン)と愛すべき5人の娘と暮らすユダヤ人。
ここではユダヤ人たちがシナゴーグを中心に、ユダヤの伝統をかたくなに守りつつ、仲良くまたお互いを尊重し合い守りあって生きていました。そして、屋根の上では、危なげにバランスを取りながら楽しい歌を弾くバイオリン弾きがいました。
彼らは厳しい毎日の生活を過ごすため、信仰と伝統を守ることで必死に生きていました。バイオリン弾きのように、バランスを保ちながら。
村中が安息日の準備に忙しいある日、仲人が生業の未亡人イェンテ婆さん(モリー・ピコン)がテビエの家を訪れます。妻をなくした肉屋のラザール(ポール・マン)と長女ツァイテル(ロザリンド・ハリス)の縁談話でした。
母ゴールデは、金持ちのラザールとの縁談を喜びますが、彼女には貧しい仕立屋のモーテル(レナード・フレイ)という許婚がいたのでした。
そうとは知らぬテビエは、町でキエフから来た革命を夢見る学生パーチック(マイケル・グレイザー)と意気投合し、彼を家に連れ帰ります。
翌日、理由も知らされないままラザールの家を訪れたテビエは、娘との結婚の申し込みをし、彼も承諾。二人は町に出かけ、ユダヤ人村の人々だけでなくロシア人たちも一緒になってこれを祝福します。
しかし翌日になってツァイテルにモーテルへの恋心を打ち明けられ、しぶしぶ二人の結婚を許してしまいます。彼らは言います。「許しではなく、祝福を!」と・・・
基本的には、ロシア皇帝による迫害の中で生きるユダヤの人々を描いた作品なのですが、一方でユダヤ人だけの問題ではない、家長を頂点とした大「家族」という生活の形が、都市化の波の中で若者が家を出て家族を持つという、いわゆる「核家族化」の問題と、そのはざまに落ちてゆく伝統的なものや価値観、そして傷ついてゆく親子の愛の姿が描かれています。
そういう追われ失われてゆくものの象徴が「屋根の上のバイオリン弾き」なのです。
結局テビエたちは村を追われ、ニューヨークに向けて旅立ってゆくわけですが、それを単に「アメリカ万歳!」とか「アメリカの懐の広さ」とかで評価するのではなく、生まれ育った土地を追われる運命にある「彷徨える民」の伝統と、そこから「愛」や「夢」によってスピンアウトしてゆく若者との悲哀を感じます。
「屋根の上のバイオリン弾き」というテーマは、彼もユダヤ人であるシャガールが描いた、ローマ皇帝ネロによってユダヤ人が虐殺されたとき、ひとり屋根の上でヴァイオリンを弾く男が元になっているとか。つまり、ユダヤ人の「不屈不変の魂」なのです。
皆さんも聞き覚えのある「サンライズ・サンセット」はこのお芝居&作品からの1曲です。監督は、「月の輝く夜に」「夜の大走査線」のノーマン・ジェイソン。結構好きなんです、この監督の作品。ちなみにヴァイオリン演奏は、やはりユダヤ人の名手アイザック・スターン。3時間を越える大作です。
出演:トポル,ノーマ・クレイン,ロザリンド・ハリス,ミシェル・マーシュ,ニーバ・スモール,エレイン・エドワーズ,キャンディス・ボンスタイン
監督:ノーマン・ジュイソン 1971年
音楽監督:ジョン・ウィリアムス
BOSS的には・・・★★★★☆
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