2010.09.11
ショパン バラード第1番 ト短調 作品23(1835年)
ショパンはバラードを4曲残しています。それらは1831年ごろから書き始められ、第4番は1842年。つまり彼の最も円熟した時期と重なります。
そして彼の「バラード」は、同じく傑作としてあげられる「スケルツォ」ほどに伝統的な古典様式にとらわれる必要がなく、また有名な「ポロネーズ」ほどに郷愁をにじませるものでもなく、つまり彼の純粋な音楽に対する想像力の発露として、いずれ劣らず輝く名作ぞろいです。
そして今日はその第1曲ト短調。逸話かも知れませんが、シューマンとショパンとの会話の中で、二人が同様に最も好きなショパンの曲だと言ったそうな。
ポーランドの詩人ミツキエヴィチの詩「コンラード・ヴァーレンロッド」にその発想を得たと言われるこの曲は、一種のソナタ形式の変形ではありますが、標題音楽のような写実性は皆無で、シューマン曰く「彼の最も粗野で最も独創性に富んだ作品」と言わしめた壮大でありまた叙情的な9分ほどの楽曲です。
青年時代のショパンの、まぎれもない素直な感情の露出。一般的なショパンに対する印象に近い、名曲です。