2010.10.20

Movies

天平の甍

奈良天平の時代に、日本における仏教確立のため唐に渡った4人の青年僧と、彼らの依頼を受け苦難の末日本に渡った鑒真和上(鑑真)の苦難の道のりを描いた歴史作品。井上靖の同名小説の映画化。

天平5年(733年)春。4人の青年僧、普照(中村嘉葎雄)、栄叡(大門正明)、玄朗(浜田光夫)、戒融(草野大悟)は、9回目となる遣唐使船に乗って大津浦を出航しました。律令国家建設を急ぐ聖武天皇の命を受け、彼らは唐の高僧の渡日要請のために洛陽に入ります。

当時の皇帝玄宗帝に迎えられた彼らは、皇帝と共に洛陽から長安に移り住みます。しかし皇帝から国外に出ることを禁じられれた僧たちの中から渡日の承諾を得られないまま、10年の歳月が過ぎ去ります。

そしてついに道抗の高弟の鑒真和上(田村高廣)と出会います。志望する弟子もおらず、しかし一行の熱意に自ら渡日を決意する和上に、弟子たちも賛同。しかし非合法のその行為は警備隊の監視により阻止されることとなります。

鑑真といえば日本に「戒律」を伝えた帰化僧であり、唐招提寺の国宝唐招提寺鑑真像が有名ですよね。そんな彼が天皇の命で呼ばれたことも、奈良に入るまでに5回も渡日に失敗し、最後は失明の後やってきたことなどは、まったく知りませんでした。

そういう歴史のお勉強にもなりますし、その影で自らの人生を賭して海を渡った若き僧侶たちの熱き人生に触れることも出来ます。

それを名演で私たちに伝えるのが、普照演じる中村嘉葎雄や大門正明ら当時の若手俳優たち、そして鑑真役の田村高廣も見事な演技です。

そうそう、玄宗帝といえば、もともと息子の后だった楊貴妃に入れ込んだ皇帝でも有名ですよね!

ナレーションは故城達也さん、「ジェットストリーム」とはもちろん言いません。

物語では彼らのほかにも、日本に伝えるためにと経典の模写に人生のすべてをかける僧業行(井川比佐志)などを見ていると、一瞬で大量の情報が世界を駆け巡る現代の私たちは、その利便さの裏で失ってしまった情熱や生きがいに思いをはせてしまいます。

まあ、「この頃からこんなに言葉って豊富だったのかな?」とか思い出すと、情報不足で不可能な時代考証などが気にはなってきますが、小さな倭の国日本が、大国中国から必死になって学ぼうとした時代があったこと、そしてかの国にもかつては熱い思いに応えて命を賭した智に長けた人がいたことを、私たちは忘れてはいけないのでしょうね。

どうやら、DVD化はされていないようですが、是非再販すべき東宝の名作です。

出演:中村嘉葎雄,大門正明,浜田光夫,草野大悟,田村高廣,井川比佐志,常田富士男,藤真利子,高峰三枝子,吉田日出子

監督:熊井啓 1980年

原作:井上靖

BOSS的には・・・★★★☆☆

天平の甍 [VHS]
井上靖

おすすめ平均:5
510年がけの執念に、心動かされます。

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