2010.11.08

Movies

Bringing Out the Dead 邦題:救命士

連夜のハードな救命の仕事で心身ともに崩壊寸前の救急救命士を描いたドラマ。主演はニコラス・ケイジ、監督はマーティン・スコセッシ。

救急救命士のフランク(ニコラス・ケイジ)は、今夜も夜勤で「心配停止」から「猫に引っかかれた」まで、さまざまな緊急連絡のたびに救急車で現場に直行していました。

kyumeisi.jpg半年前、ホームレスの少女ローズ(シンシア・ローマン)の命を救うことが出来ず、彼女の幻影に悩まされてまともに眠ることも出来ず、仕事と酒の往復の日々。心身ともに崩壊寸前でした。

ある夜、心配停止から奇跡的に一命をとり止めた老人の娘メアリー(パトリシア・アークェット)と知り合います。そして今夜こそは誰かを助けていい夜にしたいと願う彼でしたが、生きたいと願うものは死んでゆき、死にたいと願うものは死にはしない。そんなやり場のない夜が続きます。

度重ねての辞職願いは、人手不足から聞き入れてくれず、大食いで楽天家のラリー(ジョン・グッドマン)や熱心なクリスチャンのマーカス(ヴィング・レイムス)の助言も役に立ちそうにはありません。

そんな時、メアリーの後を追って、彼女に麻薬を売っていた売人のアパートを訪ねます。

スコセッシ監督、結構好きなんです。「タクシードライバー」に始まって、「グッドフェローズ」「レイジング・ブル」「ディパーテッド」などなど。とんでもなく映画マニアであると同時に、マフィアと隣り合わせのイタリア系移民社会で育った彼は、腐敗と暴力、矛盾に満ちた直面する現実のなかで、どれだけ善良に生きられるのか、そしてそれがどれだけ大変であるかという人としての苦悩を、時にストレートな暴力表現やささやかな優しさの描写によって伝えます。

こういう感覚というのは、私の好きなマーラーやマイルスにもある意味共通する部分で、そしてそれは矛盾を理解しつつ生きている私自身との親和性を感じるからかもしれません。一人でこの世に生まれ、そして一人で死んでゆくという宿命を背負った、たったひとりの、か弱く彷徨える人間でしかないことを。

音楽は、先日某国営放送がレナード・バーンスタインと写真を間違えたというエルマー・バーンスタイン。映画ファンなら失笑物ですよね!

作品自体は原作の地味さが災いして、スコセッシ風味はかなり薄いのですが、見方によってはやはり彼独特の世界、スコセッシ・ワールドが展開されます。

夢も希望ももちろん大切なのですが、目の前の現実といかにちゃんと向き合い、どこまで生まれ持った善良さで生きて行けるのか?個人的には★4つでもいいと思える作品です。
出演:ニコラス・ケイジ,パトリシア・アークエット,ジョン・グッドマン,ヴィング・レイムス,トム・サイズモア,マーク・アンソニー,シンシア・ローマン

監督:マーティン・スコセッシ 2000年

音楽:エルマー・バーンスタイン

BOSS的には・・・★★★☆☆

救命士 [DVD]

おすすめ平均:3.5
4ニコラス&スコセッシ
4荒々しいタッチの力作
5ひさびさにアメリカ映画でガツンときた。
4純映画
1なんだろうね。

Amazon.co.jpで見る by Azmix
 

もっとムービー・アーカイブスはこちら >>> 「ムービー・インデックス」

INDEX

CATEGORY

ARCHIVE