2010.11.06
乱
シェイクスピアの悲劇「リア王」をベースに、戦国武将の姿で描いた日仏合作の時代劇。監督はかの黒沢明。アカデミー衣裳デザイン賞受賞作品。
戦国乱世に近隣諸国を攻め落とし、3つの城を構える領主となった一文字秀虎(仲代達矢)は、狩の最中に家督を長男の太郎孝虎(寺尾聰)に譲り、自らは隠居するとの旨を同席した客人や3人の息子たちに告げます。
3本の矢の逸話で3人の息子たちが互いに助け合うことを説く秀虎。次男次郎正虎(根津甚八)も兄と共に父に同意しますが、三男の三郎直虎(隆大介)は父の甘さを責め、3本の矢をへし折って見せます。
自らの意にそむく直虎とその家臣平山丹後(油井昌由樹)をその場で絶縁、追放した秀虎には、思いのほか早く二人の息子たちの裏切りに会うことになります。
一言で言えば「七人の侍」フルカラー悲劇風味拡張版とでもいいましょうか。良くも悪くもあの名作の「クロサワ」らしさにあふれる作品です。
原作のせいもあるのかカメラ自体は引き気味ですので、悲劇自体はデリカシーよりは静と動の展開の中で提示されます。日本映画というよりはヨーロッパの映画に近い。日仏合作の影響もあるのでしょうか?
壮大な戦国絵巻ですので、その迫力はさすがのもの。ただ、セットはやや大味。前述のように引いたカメラは登場人物の表情やしぐさという日本人の琴線には響きにくい映像かも。
「リア王」でも重要な役回りの道化をピーターが演じています。がんばっていますが、「リア王」のように主人公の悲劇を背負うほどの演技は見当たりません。
アカデミー賞を受賞したワダ・エミによる衣装。撮影中にある役者が衣装が重いと不満を漏らすと、世界のクロサワは「衣装が重いなら、役者を変えろ!」と言ったそうな。御意。
出演:仲代達矢,寺尾聰,根津甚八,隆大介,原田美枝子,宮崎美子,野村武司,井川比佐志,ピーター,油井昌由樹
監督:黒澤明 1985年
音楽:武満徹
BOSS的には・・・★★★☆☆
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