2010.11.16

Movies

亡国のイージス

海上自衛隊のイージス艦を乗っ取り首都東京にせまる某国工作員と、艦内に残った自衛官との戦いを描いた邦画作品。福井晴敏の同名小説の映画化。松竹110周年記念、日本ヘラルド映画50周年記念、IMAGICA70周年記念、TOKYO FM35周年記念作品。

海上訓練中の海上自衛隊のイージス艦「いそかぜ」が、FTG(海上訓練指導隊)の溝口3佐を騙り乗り込んだ某国のテロリスト、ヨンファ(中井貴一)と副艦長宮津(寺尾聰)の共謀によって乗っ取られます。

e-jis.jpg乗員たちは総員退艦させられますが、彼らに拘束された諜報機関DAISの諜報員如月(勝地涼)と彼を案じ密かに艦に戻った先任伍長の仙石(真田広之)は、たった二人でテロリストたちに立ち向かいます。

海上訓練に同行していた僚艦「うらかぜ」を対艦ミサイルで撃沈したヨンファたちは、緊急招集された国家安全保障会議に対して、宣戦布告とも取れる条件提示をします。そして、政府がその条件をのまないなら、首都に向けて「GUSOH」という生物化学兵器を弾頭にしたミサイルを撃ち込むと脅迫してきます。

折りしも、尖閣諸島問題で「日本の防衛」とか「真の愛国心」とか、そういうことが私たち日本人一人一人に問われている今日この頃。そういう意味で本作を見れば、またいろいろと考えさせられる部分があります。

物語は、副官宮津の息子で防衛大生の宮津隆史の論文「亡国のイージス」で始まります。それは論文というよりは国防に身を賭す若者の憂鬱であり嘆きでもありました。

「国力とは財力や軍事力ではなく、国民が祖国に抱く愛国心である」

「今の日本には愛国心も、国家の意思と呼べるものも無い」

そして「防衛の要であるイージス艦は、守るべき国を亡くしている」と・・・

それらがこの物語のイントロであり、また私たち観るものに突きつけられた問題定義でもあります。

日常茶飯事に奔走する毎日の中で、そういう問題定義を自身に問いかけることができれば、本作の使命はもう観る前に終えているとも言えます。

実際、展開的にはやはりB級っぽい展開があったり、上映時間の制限で編集されたような後味の悪さが残ります。むしろ原作とは思考を異にし、前述の論文を軸にイージス艦の氾濫とそれを受けた「日本人」が思い起こさなければならないことに主軸をおいたほうが、もっといい作品になったような気がしますが、そうするとことによってはただの右よりな作品になってしまう可能性もなくはないですか・・・。

原作者の福井晴敏は、もちろん私以上に愛国心にあふれ、またやや反米思想の持ち主なのでしょうが、映画ではそれをなにかと覆い隠そうとすることで、返って物語の本質がぼけてしまっているような気がします。

企画段階で「現職の自衛隊幹部が反乱を起こす」などという内容の映画には、一切協力できないと拒否していた当時の防衛庁も、さまざまなシナリオ改定や当時の防衛庁長官だった自民党の石破衆議院議員の再考要請により実現されたそうです。

本作以降、「ローレライ」「戦国自衛隊1549」「男たちの大和/YAMATO」などの作品が作られますが、最も、いや唯一戦争と平和に関するメッセージを内在した作品です。

護衛艦を、そして首都東京を守る自衛官の名前が「仙石」というのは、かなりきついジョーク!?「仙谷」ではありませんが・・・(@_@)

作品自体は「★★」ではありますが、今のこの時期にできればたくさんの一般の方に観ていただきたいという意味で「★★★」といたします。

出演:真田広之,中井貴一,寺尾聰,佐藤浩市,勝地涼,原田芳雄,岸部一徳,安藤政信,吉田栄作

監督:阪本順治 2005年

BOSS的には・・・★★★☆☆

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